展覧会のタイトルにもあるように、この展覧会の縦糸は「コビケン」で横糸は「高橋コレクション」です。
コビケンとは東京藝術大学のカリキュラムで古美術研究旅行のことです。
どうも現代活動している作家はこのコビケンに影響されているところが多いようだということで、現在活動している作家にコビケンの思い出を語ってもらい、また再び今あらためて京都、奈良などに旅をして語ってもらおうというという企画をしたのが、雑誌BRUTUSです。2011年11月1日発行のBRUTUSでは「京都・奈良・滋賀・大阪、必修古美術研究旅行」という特集を組んでおり、そこでは、千住博、小谷元彦、山口晃、会田誠、鴻池朋子、ひびのこづえ、といった作家が旅をして古美術を紹介しています。
高橋コレクションは、タカハシクリニックという病院の経営を行う高橋龍太郎さんのコレクションで、日本の現代作家の作品を中心に1000点以上の作品が集められています。
奈良美智、村上隆、会田誠、山口晃、小谷元彦、束芋、鴻池朋子、名和晃平、三沢厚彦、などの作品がコレクションされています。
今回の展覧会はこの2つの切り口を組み合わせたもので、主催は高橋コレクション、協力はBRUTUS編集部、キュレーションは美術ジャーナリストの鈴木芳雄です。
高橋コレクションを使って、現代活躍している作家の、古美術にインスパイアされた作品を見ようと言うものです。
作品展数は13点なのですが、どれもこれも目が離せないような作品です。一部を紹介すると、
- 小谷元彦《SP4 the specter-Arabesque woman with a heart》。FRP製の女性像で、橋本平八の《花園に遊ぶ天女》を意識しているということですが、手に心臓を持ったこの像が表している感性の中心部分は密教の仏像に繋がっていそうです。
- 鴻池朋子《無題》。巨大な髑髏が中心にある襖絵。襖をあけると髑髏が左右に分かれるかたちになる。障壁画というフォーマットがインパクトを強めています。
- 会田誠《美しい旗》。二曲一双の屏風絵。内容は左隻には日本の少女が戦場と思われる場で日の丸の旗を振っている姿。右隻にはチマチョゴリの少女が韓国の旗を振っている姿。二曲一双は風神雷神図につながると解説にありましたが、それだけでないザワメキを感じる作品。
- 山口晃《九相圖》。これは小野小町が死んで腐乱していくところを描き、生の無常を表現したという、九相図をもじった作品。頭が馬で胴体がバイクの不思議な乗り物が、死んで?、変化していく様子を示している。
現代の、尖った作品も、日本の美術の伝統とつながりを持っている事がわかります。
男の子の雑誌のようなイメージがあるBRUTUSですが、コビケン特集は見ても良いかもしれませんね。
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