2012年3月30日金曜日

アートフェア東京2012

アートフェア東京2012が、今日(2012年3月30日)から3日間開催されていますので、早速のぞきに行きました。そうです、のぞきに行ったのです。冷やかしですみません。
昨年は、3月11日の東日本大震災の影響で、アートフェア東京は春に開催できず夏になってしまいましたから、予定通り開催するという何でもないことにも感慨深いものがあります。

内容は、いつものように、工芸から現代美術まで多様です。

全体を通してみると、高橋龍太郎さんのコレクションにあるような、ネオテニー(幼形成熟)的な、成熟しきれない感性を成熟させたような作品が目立ったような気がします。また、女性をきれいに描いたホキ美術館にあるような写実的作品も目につきました。やはりこういう作品が売れるのでしょうか。

私が気になったのは、

  • バンビナート・ギャラリーの平川恒太さんの、物語性を感じる作品。
  • 山本現代の田中圭介さんの、高さ3mくらいありそうな立体作品。
  • 新生堂の佐藤草太さんの、好きにはなれないけれど、つい恐いもの見たさで見てしまう、脂ぎった大人の男性や、しょぼくれた老人を、描いた作品。
  • MEGUMI OGITA GALLERYのホリー・ファレルさんの、本をアクリルと油で描いた作品。
  • 「ギャラリーためなが」のチェン・ジャン・ホンの作品。
今回は残念ながら冷やかしでしたが、ぜひ現代作家の作品を購入してみるという楽しみにもチャレンジしてみたいですね。


生老病死の図像学

筑摩選書から出ている、加須屋誠著『生老病死の図像学』2012年2月15日発行を読んでみました。加須屋さんは奈良女子大学の教授で、仏教説話画研究等をされています。

この書籍では、ヨーロッパのキリスト教美術研究の手法であるイコノロジー(図像学)を、日本の仏教説話画を読み解くのに使っています。

ドイツ出身のパノフスキーのイコノロジー研究によると、絵の解釈は3段階で考えられるそうです。第一に「自然的主題」段階があり、特に専門的な知識は無くてもわかる主題です。第二に「伝習的主題」段階があり、ここでは特定のことに関する文献から得た知識が必要になります、たとえばキリストが弟子と食事をしていれば最後の晩餐ということになります。第三が「内的意味・内容」段階で、その図像にかんする深い洞察により得られるものということになるようです。加須屋さんはこれを、「仏伝図」「法華経絵」「浄土教系説話図」に由来する生老病死に関する仏教説話画を解読するのに使っています。

私にとっては初めての話も多く、たいへん面白く、250ページを超える本でしたがすぐに読めてしまいました。例えば、「生まれる」といういう「苦」の図像からは、当時の出産が座って行ったのだという話から始まり、出産に見る当時の男と女の関係、赤ん坊は外の世界から来るという思想の話まで出てきます。まだまだ、面白い話がたくさんあるのですが、ここには書ききれません。

仏教思想の根本にある、四苦「生苦」「老苦」「病苦」「死苦」に関する図像に、どんな想いが込められているか分析的に明らかにされていますので、仏教に関する図像に興味がある方、また古代から中世にかけての日本人の死生観に関して興味がある方、今の時代だから昔の人の考えも知りたいと思っている方には、お勧めの本です。

2012年3月27日火曜日

今日のGoogleはミース・ファン・デル・ローエ

今日(2012年3月27日)、Googleで検索しようとしたところ、いつもは"Google"と書いてあるところに建物の図柄が載っていました。これはもしかしたらと思って、カーソルをその図柄に持っていくと、やはりミース・ファン・デル・ローエです。今日は誕生日で生誕126周年でした。

ミース・ファン・デル・ローエは、ル・コルビュジェ、フランク・ロイド・ライトと共に、近代建築の元を築いた建築家で、ガラスと鉄骨のビルはこのひとを除いては語れませんね。
徹底してモダンに突き進んだ、私の好きな建築家です。
代表的な作品はニューヨークのシーグラムビル、イリノイ工科大学のクラウン・ホール、イリノイのファンズワース邸。

"Less is More"がミース・ファン・デル・ローエの信条です。今でも当てはまりますね。

2012年3月25日日曜日

ボストン美術館 日本美術の至宝

東京国立博物館で、「ボストン美術館 日本美術の至宝」展が始まったので、早速見に行ってきました。

海外の日本美術コレクションではボストン美術館が質量ともに最高と言われています。それは、明治になって日本美術という概念を確立し美術教育を始めたフェノロサと岡倉天心が、ボストン美術館の日本美術品収集もリードしたためです。

ためしに、Museum of Fine Art, Boston (ボストン美術館)のウェブで、日本絵画のコレクションの記述を見ると、次のように描かれています。日本絵画は数千点あり、その中心は、アーネスト・フェノロサ、ウイリアム・スタージス・ビゲローにより収集されたもの。15世紀の禅に係る水墨画、狩野派の絵、浮世絵、そして絵巻物の吉備大臣入唐絵巻と三条殿夜討巻、で知られている。

今回は、そのボストン美術館から、92点の美術品が里帰りしていて、どれも素晴らしい作品です。

東京国立博物館では、どの作品を見たいですかアンケートを行っており、その結果は、
1、《雲龍図》曾我蕭白
2、《弥勒菩薩立像》快慶
3、《鸚鵡図》伊藤若沖
4、《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》
5、《竜虎図屏風》長谷川等伯
となっています。

今日私が見て気に入ったのは、
1《普賢延命菩薩像》
2《松に麝香猫図屏風》伝狩野雅楽助
3《松島図屏風》尾形光琳
4《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》
5《馬頭観音菩薩像》

平安時代から明治まで、絵だけでなく刀や染織も、曾我蕭白はなんと11点も、というわけで、ここまで集めたのかボストン美術館という感じです。

展覧会会期は、2012年3月20日から6月10日ですから、もう一度行ってみようと思っています。


2012年3月20日火曜日

VOCA展

先週の金曜日に、上野の森美術館に「VOCA展」を見に行ってきました。

VOCA展とは、推薦委員に40才以下の若手の作家の推薦を依頼し、その推薦された作家が新たに平面作品を制作し出品するものです。作品は、選考委員が選考し、優秀な作品には賞が与えられます。VOCA展は1994年に始まり、今回は19回目にあたります。

今回の推薦委員は、美術館の学芸員、独立キュレーター、学校の先生、ジャーナリストなど35名の方です。

選考委員は次の方々です。


  • 高階 秀爾 (選考委員長/大原美術館館長)
  • 酒井 忠康 (世田谷美術館館長)
  • 建畠 晢  (京都市立芸術大学学長)
  • 本江 邦夫 (多摩美術大学教授)
  • 神谷 幸江 (広島市現代美術館学芸担当課長)
  • 光田 由里 (美術評論家)
  • 南嶌 宏  (女子美術大学教授)
今回推薦され出品されている作家と作品は次のようになっています。
  • 池森 暢昌     今生ザウルス
  • 榎本 耕一     電撃氏(でんげきうじ)
  • 呉 夏枝     十五つの房
  • 大成 哲      まねび No.6      【佳作賞】
  • 奥村 雄樹     くうそうかいぼうがく
  • 尾家 杏奈     からっぽのからだ
  • 柏原 由佳     21'19   /  クルイスク      【佳作賞 大原美術館賞】
  • 椛田 ちひろ   影の声
  • 桑久保 徹     Study of mom      【VOCA奨励賞】
  • 小村 希史     終止符/Period  /  フェーズ/Phase
  • 近藤 智美                 のこそうヒトプラネスト
  • 鈴木 星亜                    絵が見る世界11_03      【VOCA賞】
  • 関根 直子     とめどない話 / 差異と連動
  • 五月女 哲平   彼、彼女、あなた、私
  • 高橋 芙美子   はざま
  • 高橋 ゆり     儚くも嘘吹く
  • 武居 功一郎    untitled(adaptation)      【VOCA奨励賞】
  • 竹中 美幸     溢れる時間 / 発芽
  • 田中 千智     きょう、世界のどこか
  • 津田 直     Back Door #2 / Back Door #3
  • 永岡 大輔     accumulating - 01
  • 永禮 賢     untitled
  • 濱田 樹里     地の起源
  • 堀川 すなお   lighter, D, 凹oo-凸3, 0
  • 前沢 知子     組替え絵画/私たちの作品を見てくださいー30/49,2011
  • 松下 徹     Kelen(Skull)
  • 松本 三和     地上
  • 三浦 洋子     無題
  • 宮地 明人     paradox-明日のために-
  • 宮本 佳美     creation
  • 山内 光枝     眼はおのずと見開いた
  • 山田 郁予     安心毛布とかそういうのください
  • 吉濱 翔     音響装置no.1
  • ワタリドリ計画(麻生知子、武内明子) ワタリドリ通信 / ワタリドリ計画

展覧会を見ての感想としては、作品から、物語的なものを感じさせることが多いものが多かったということです。受賞作で言うと、鈴木星亜さん、桑久保さん、柏原さんの作品に、そのようなことを感じました。作家の皆さんの他の作品も見てみたいですね。

現代美術の展望「VOCA展2012 -新しい平面の作家たち-」展は、上野の森美術館で、2010年3月15日から3月30日まで開催です。
http://www.ueno-mori.org/voca/2012/

2012年3月19日月曜日

今和次郎 採集講義展

今まで、今和次郎さんのことを知りませんでした。今和次郎さんは1888年生まれ。考現学の創始者、民俗学者、民家研究家、服装研究家、建築家。とにかく、住むことや生活することに対する興味がすごい。

パナソニック汐留ミュージアムで2012年1月14日から3月25日まで開催されている「今和次郎 採集講義展」には、その今和次郎さんがかかわってきた、多様な資料が所狭しと並べられています。
その一端を書いてみると、

  • 日本の各地にある民家のスケッチ
  • 今和次郎設計の恩賜郷倉(凶作に備えて米を備蓄するために作った建物)の模型
  • 朝鮮の民家のスケッチ
  • 雨樋、植木鉢等路傍で見つけたものの図
  • 関東大震災後のバラックの図
  • 今和次郎が作った「バラック装飾社」の作品
  • 銀座で見る履物、着物、外套、帽子などを分類グラフ化して整理したもの、しかもそのグラフには実物の絵が描かれている
  • オシメの模様採取
  • 東京場末女人の結髪
  • 今和次郎が作ったセツルメントハウス(地域社会の貧困者救済のための施設)の図
  • 今和次郎が作った装飾された椅子
  • 西洋・日本、古代〜近代女性服装史概略図
唖然として、「すごいですね」としか言いようがありません。

今回の展覧会での収穫の第一は、考現学から出てくる、たくさんの採集されたものを見ることでしたが、それと同じくらい感動したのは、バラック(もうこの言葉も死後かもしれませんが)を装飾するための会社を作ってしまった人がいたことです。雨露を忍ぶだけのバラックではいけない、そこには装飾が必要だと言って、バラックを装飾をするための「バラック装飾社」を作ってしまったわけです。その会社は、関東大震災後建てられたバラック作りの商店の、看板をつくったり内装をしたりしています。貧しくても、何も無くても、より楽しく生活するためにできることはある。今さんて、すごい人だったのですね。

展覧会は3月25日まで開催されていますので、興味のある方は、ぜひ行ってみてください。

2012年3月17日土曜日

野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿

左の写真の、人気のない寂しいカフェはどこのカフェでしょうか。そうです、国立新美術館の2Fのカフェです。夜6時半くらいです。

金曜日の夜は、美術館も8時まで開いている所が多く、良い時間を過ごせることが多いのですが、少し人気のない展覧会だと、美術館独り占め状態になり、贅沢なような、寂しいような、気分を味わうことになります。

今日、国立新美術館で開催されている、「野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿」展も、そんな感じでした。独り占めではありませんでしたが、観客よりも監視員さんのほうが何倍か多いような状況でした。良い展覧会なのに残念、皆さん来てください。

野田裕示(のだひろじ)さんは1952年和歌山県生まれ、多摩美術大学を卒業し、80年代より活躍されている抽象絵画の作家です。今回の展覧会は、3章から成っていて、1)1980年代 絵画の可能性への試み、2)1990年代 独自の様式の確立と展開、3)2000年代 さらなる可能性を求めて、という年代順の構成です。また、2カ所に彫刻家の岡本敦生さんとのコラボレーション作品が置かれています。

1980年代は、薄い木箱の中にカンバスをまるめたまま置いた作品や、木枠をカンバスで包み込んだ上に描いた作品等、単に平面のカンバスに絵を描かないぞという作品。
1990年代は、平面上にカンバスを重ねてカンバスを折り曲げて使ったり、カンバスを縫い合わせたりした上に、描いた作品。
2000年代は、カンバスに細工をするよりも、こころに浮かんだ形状を絵にしたような作品。

こう書いていくと、理念先行のようですが、実際の作品を見ると、1980年代、90年代の作品では、カンバスの縫い目の感触、重ねられた色が作る微妙な色彩、筆のあと、絵具が流れた跡、色が擦れたような跡など、手作業の工程を感じさせるような要素が多く、絵としての実体がそこにあることを強く感じます。絵のまえに長い時間立って絵と対話を続けたくなるような作品です。
2000年代の作品は、自由に心に浮かぶ不定形な形状を描いたような作品、日本の障壁画のように真ん中に空白を大きくとり大きな筆跡を残したような作品と、新たな展開を示しています。私はその色の出し方や、色の対比のさせかたが、気に入りました。
作品は、全部で140点もあるので、最後の方は「後15分です」のアナウンスで、慌てて見なければいけなかったのが残念です。

野田裕示さんの作品は、パンフレットやポスターを見ただけで、ああ、こういう作品なんだ決めてしまわず、ぜひ本物を見てもらいたいと思います。

「野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿」は国立新美術館で2012年4月2日までの開催です。

2012年3月11日日曜日

ジャン=ミシェル オトニエル マイウェイ

原美術館で開催されている「ジャン=ミシェル オトニエル マイウェイ」展は、今日、2012年3月11日までの開催です。私は、良い展覧会だと聞いていたので、昨日の午後慌てて、行って来ました。

ジャン=ミシェル オトニエル(Jean-Michel Othoniel)は、1964年生まれのフランスの作家で、現在はパリ在住です。オトニエルは1992年ドクメンタでの硫黄を使った作品で最初に注目されました。1993年からはガラスを使った作品を作り始めます。2011年にパリのポンピドゥーセンターで開催された「マイウェイ」展には20万人の入館者を集めています。

今回は、1992年から1993年に作られた、ワックス、硫黄、黄ろうを使った作品、《時計皿》《長い苦しみへの入り口》《目》《女予言者の穴》《象ったヴィーナス》から展示されていますが、多くは最近のムラノガラスを使った作品になっています。
《私のベッド》は実物大のベッドをガラスで装飾した作品。様々な色のガラスを直線上に並べたバナーと呼ばれる作品。《ラカンの結び目》《ラカンの大きな結び目》というガラス玉を連ねて紐のようにしそれを3次元にひねり切れ目無く循環するようにした作品。透明な瓶の中の水に様々な形態のガラスを閉じ込めたものを多数並べた《涙》。
私のお気に入りは、2階の真ん中の部屋にあった《ハピネスダイアリー》。これは屏風のように折曲がる衝立てに沢山の桟を配置しそこに深紅のムラノガラスを通してある作品、横3.5m、縦2mの大きな作品です。

オトニエルのガラスを使った作品は、ガラスの硬質な表面の輝き、有機的に微妙に変形した形態、鮮やかな色彩を連ねる諧調、とにかく観て楽しくなることは間違いあありません。

ユベール・ロベール 時間の庭、国立西洋美術館

国立西洋美術館は、ときどき日本ではあまり有名でない作家の企画展を行います。例えば2008年に開催された「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」。今回のユベール・ロベールも日本ではほとんど知られていないのではないでしょうか。

かわった企画が嫌いでない私としては、早速行ってみました。

ユベール・ロベール(Hubert Robert)は、18世紀のフランスの画家で、1733年生まれ、1808年没ですから、50歳代半ばで1789年のフランス革命を経験することになります。同時代の画家としては、ロココ派のフラゴナールなどがいます。
ユベール・ロベールが何を描いたかというと、ローマの廃墟をモチーフにして、想像も交えて描いた風景画です。パンフレットには「廃墟のロベール」として名声を築いたと書いてあります。イタリア人が描く、都市景観画(ヴェドゥータ)や奇想画(カプリッチョ)のような絵を、フランス人のユベール・ロベールが、ローマを題材にして描いたといえばわかりやすいでしょうか。

今回展示されている作品の大部分は、フランスの南東部のヴァランスにあるヴァランス美術館が所蔵する、サンギーヌといわれる赤チョークで描かれた素描ですが、大きな油絵も、ヴァランス美術館、ルーブル美術館、イル・ド・フランス美術館、国立西洋美術館、静岡県立美術館、ヤマザキマザック美術館などから来ています。展示作品数は全部で130点。

展示は6章に分かれています。

  • Ⅰ「イタリアと画家たち」、ユベール・ロベールが研究したと思われる、17世紀の風景画家たちの作品
  • Ⅱ「古代ローマと教皇たちのローマ」、ローマの名所旧跡を描いた、ユベール・ロベールの若い頃の作品
  • Ⅲ「モティーフを求めて」、ピトレスクなモティーフを求めてローマ郊外の自然や廃墟となっている神殿等を描いた作品
  • Ⅳ「フランスの情景」、イタリアからフランスにもどって、フランスの広場や教会をモティーフとして取り込みながら、イタリアの思い出を展開した作品
  • Ⅴ「奇想の風景」、自在にモティーフを取り扱い、「廃墟のロベール」の名声を得た時期の作品
  • Ⅵ「庭園からアルカディアへ」、ユベール・ロベールは「国王の庭園デザイナー」という称号を得たように、庭園デザイナーとしての側面を持っている。ここでは絵と庭園の相互作用を感じさせる作品
展示を観て、ローマの廃墟の絵を堪能したと思えるか、同じような絵が沢山あり少し退屈してしまうかは微妙です。当時の貴族のように「ローマの廃墟を見ながら、時の移り変わりに想いをいたす」気持ちになるのは、現代人には難しいかもしれませんね。

国立西洋美術館、開催期間は2012年3月6日から5月20日です。




2012年3月10日土曜日

サントリー美術館 東洋陶磁の美

サントリー美術館で2012年1月28日から4月1日まで「悠久の光彩 東洋陶磁の美」展が開催されています。

今回の展示品は大阪市立陶磁美術館の所蔵の名品です。これは元をたどれば安宅産業の安宅英一が収集した安宅コレクションで、安宅産業が1977年に破綻し消滅した後、色々あって最終的に住友グループが大阪市に寄贈したものです。

今回の展覧会は、大阪市立東洋陶磁美術館が2011年12月26日から2012年4月6日の間、設備工事のために休館になるので、その間に主要な所蔵品を東京で見てもらおうというものです。中国陶磁が67点、韓国陶磁が66点、展示されています。その中には国宝の、《飛青磁花生》と《油滴天目茶碗》も含まれています。

私が良いと思ったのは、龍泉窯の《飛青磁花生》、定窯の《白磁銹花 牡丹唐草文瓶》、鈞窯の《月白釉碗》など中国宋時代の作品でした。何回も見たいなと思わせるものがあります。

陶磁器は私の得意分野ではないので、まずは、大阪市立東洋陶磁美術館ウェブサイトの「陶磁入門」で勉強してみようと思っています。
http://www.moco.or.jp/intro/guide.html

2012年3月9日金曜日

イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに

今、六本木の森美術館でイ・ブル展が行われています。

イ・ブル(Lee Bul)は1964年にソウルで生まれた女性アーティスト。1990年代にアジアに現れた傑出したアーティストの一人だと英語版WIKIPEDIAには書いてあります。1999年ヴェネツィア ビエンナーレの韓国代表。2010年に東京都現代美術館で行われた「トランスフォーメーション展」にも《クラッシュ》という作品が展示されていました。

会場に入ると、最初に天井から有機的な血のようなしみのある物体(作品)がぶら下がっているのでビックリします。その後は、何か気味悪いような、それでいて離れられないような、生命体を思わせる作品。自らが、その気味の悪い彫刻を纏って飛行場に出現するイベント作品の記録影像。人体を超えて人体の一部をサイボーグ的にしたようなプラスティックの造形作品。MOMAで撤去を命じられた生魚を装飾した作品の記録。作家が作品を孵化させるためにつかうスタジオを再現したスペース。過去/現在の韓国の歴史的/政治的状況を造形にしてみた作品。作家がお気に入りなのかなと思わせる大きな犬の作品。そして作家が森美術館で展示する所を記録したメーキング影像。

どんな作品かは、森美術館のウェブ・ページから見てください。
http://www.mori.art.museum/contents/leebul/introduction/index.html

この展覧会を見て、イ・ブルさんは、まさに現代の作家だと改めて感じます。作家としては、最初にイベントで注目されたというのも現代的です。1990年代のフェミニズムだと言われたイベントも、MOMAでの作品撤去の話も、スキャンダラスです。
作品を見ると、外面的でなく内蔵的な生命への関心、個人的なことばかりでない韓国の政治的・社会的なものへの関心など、イ・ブルさんが、作品を通して何かを探している、又は何かを探した過程が作品になっている、と感じることができます。

展覧会は5月27まで開催されています。アジアの現代美術に関心があるかたにはお勧めです。

2012年3月4日日曜日

「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展

靉嘔に関しては、だいぶ前に、東京国立近代美術館所蔵で作品を見て衝撃を受けたのを覚えています。たぶん《アダムとイヴ》だったと思うのですが、人物を虹色のスペクトルで塗り分けた作品で、日本にもこのように色彩でコンセプトを表現することにこだわった人がいたんだと感心しました。

昨日3月3日に、東京都現代美術館の「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展の、学芸員の方によるギャラリーツアーに参加させてもらい、靉嘔の全貌が見えてきました。

靉嘔は1931年の生まれですから、現在80才です。
靉嘔とは変なペンネーム(雅号?)ですが、これは仲間内で「あいうえお」の中で好きなのはどれかと聞き、「あ」「い」「お」を選んだということだそうで、面白いですね。

靉嘔の活躍は、1950年代、当時の日本の美術としては突出して明るい、オプティミスティックな表現で、大きな作品を作り始めた所から始まります。今回の展示品では《田園》がその代表作になります。
1958年にアメリカに渡ると、そこでは絵画平面にとらわれない、環境作品を作り始め、オノ・ヨーコらのフルクサスとの交流も持ちます。その後、虹色のスペクトラムを使った作品をたくさんつくるようになります。

私が今回の「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展で興味を持った点は、

  • 靉嘔がレジェ的な一種オプティミスティックな絵画からスタートし、環境芸術、ハプニングなど1950年代から1960年代の最先端の動向に呼応していったその歴史。
  • その後、線・形を超えて、虹の色で表現するまさにユニークなスタイルを獲得し、それで様々な作品が作られたこと。
  • 伝統から離れた作品を作っているように見ながら、般若心教を写した作品や、中国の漢詩を写した作品があり、日本・東洋文化に対する関心もあったことがわかる点。
  • 芸術の普及を考え、版画作品にも力を入れられていて、版画作品も多く展示されていること。
  • そして、今回の展覧会のためにあらたに作った大きな作品があり、まだまだ活躍をされているのだと判った点。ちなみに、靉嘔さんは日曜日には会場に来られて、ハプニングをされたりしているそうです。
「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展は、2012年2月4日から5月6日までの開催です。200点を超える作品が展示されていますから、見に行かれる方は、ゆっくり時間をとって行くと良いでしょう。靉嘔さんは、毎週日曜日午後1時から2時間くらい、会場内で作品のオブジェクトを並べ替えるというパフォーマンスをされているということですから、その時に行くのが良いかもしれませんね。

2012年3月3日、ギャラリー巡、渋谷から六本木

2012年3月3日、又々、いつものギャラリー巡りのメンバーと一緒にギャラリーやアートスポット巡り。今日は渋谷から六本木です。

六本木では、6つのギャラリーが、国立新美術館で開催されている平成23年度五美術大展と歩調を会わせて「六本木αアートウィーク」を行っているので、そのいくつかを訪問しました。

写真は、移動の間に立寄った、国立新美術館近くの六本木トンネルにある、東京都が行っているストリート・ペインティングです。

名前場所展示内容
西武渋谷店美術画廊渋谷区宇田川町21-1西武渋谷店B館8階にある美術画廊です。今の展示は、東北芸術工科大学にゆかりの作家の展示「トウホクノチカラ」です。2月29日〜3月11日。深井聡一郎さんの陶器の動物シリーズなど。
https://www2.seibu.jp/wsc-customer-app/page/020/dynamic/shop_details/ShopDetails?shop=S000000361
Bunkamuraギャラリー渋谷区道玄坂2-24-1Bunkamuraにあるギャラリー。「飛翔する二つの旋律-有元利夫・舟越桂版画展-」を2月24日から3月4日まで行っています。レンタルスペースのボックス・ギャラリーではボロフスキー グラスアート展。
http://www.bunkamura.co.jp/gallery/
六本木605画廊港区六本木7-5-11 カサ・グランデ・ミワ605
東京造形大学の若い版画作家の作品。入野陽子、西平幸太、藤木佑里恵、水本伸樹。
http://roppongi605hanga.com/roppongi605hanga-home.html
ANOTHER FUNCTION港区六本木7-20-2 アバンティ407多摩美術大学大学院 在学中の写真作家、山本渉展。
http://fudeya.net/gallery/
ギャラリー・トリニティ
東京造形大学院生によるグループ展「panorama」。清原亮、清水信幸、長堀恵三。
http://www.g-trinity.com/schedule/index.html