2013年1月27日日曜日

吉祥のかたち 泉屋博古館分館

六本木の泉屋博古館分館で、「吉祥のかたち」展が開催されています。七福神のような吉祥のかたちも良いですが、私にとっての興味は、商・周時代の青銅器、漢の四神、それに若冲です。

泉屋博古館の青銅器には、私の好きなものがたくさんあり、今回の展示も楽しいものがたくさん出ていました。私のお気に入りは、商の時代の《饕餮文斝》、これは饕餮文が深く彫られていて良い感じです。西周の《虎卣》、虎が人間を喰う図の卣です、その意味は良くわからないようですが、とにかくめでたい図像のようです。漢代や唐代の鏡もたくさん出品されています。よく見ないと何の図か判りにくいのですが、泉屋のキャプションは親切なので、よく見ると勉強になります。
絵では、伊藤若冲の《海堂目白図》。目白が木の枝の上に寄り添い合っているのが可愛い。

泉屋博古館の「吉祥のかたち」展は2013年2月11日までです。

アーティスト・ファイル2013 国立新美術館

アーティスト・ファイル展は、国立新美術館が2008年から継続的に開催しているプログラムです。今回の「アーティスト・ファイル2013−現代の作家たち」が5回目にあたります。内容は、国立新美術館が、国内外で活動する作家を個展形式で紹介し、またその作家に関する情報のアーカイブも作成しようというものです。所蔵品を持たない国立新美術館としてはアートセンターとしての真価を問われるプログラムです。

今回は8人の作家が、それぞれのブースで展示するという形になっています。
日本からは、東亭順、利部志穂、國安孝昌、中澤英明、志賀理江子の5人。海外からは、イギリスのダレン・アーモンド、インドのナリニ・マラニ、韓国のヂョン・ヨンドゥです。

作品のメディアも、手法も、表現しようとしていることも、それぞれ異なるのですが、私にとっては、どの作家の作品も刺激的でした。

本当は、ここで作品紹介をした方が良いのかもしれませんが、言語化するとどうしてもそれぞれの作品の良さを表現しきれないような気がします。もうすこし時間をかけて考えてみたいと思いますので、今回はとりあえずこんな展覧会があると言う紹介だけにします。

「アーティスト・ファイル2013−現代の作家たち」は2013年4月1日までと会期も長いので、ぜひ一度行ってみてください。

2013年1月21日月曜日

エル・グレコ展 東京都美術館

エル・グレコ(1541−1614)はベラスケスやゴヤとならぶスペインを代表する画家だといわれています。1541年にギリシャのクレタ島で生まれ、イタリアで活動した後、1576年にスペインに渡り、対抗宗教改革ただなかのトレドで活躍します。
今、東京都現代美術館で開催されている、「エル・グレコ」展は、そのエル・グレコの油彩作品が47点、テンペラ作品が3点出展されている、充実の展覧会です。

10点ほどの肖像画を除けば、後はすべて宗教画です。絵を観るとき、そこに描かれている「ものがたり」(内容)を観るのか、形・色・構成(形式)を観るのか、いつも気になります。特に今回のような宗教画では、それをどう観たら良いのか、考えてしまいます。例えば、今回も《無原罪の御宿り》という大きな作品が出展されていますが、今の日本で「無原罪の御宿り」という「聖母マリアは元祖アダムの罪を免れている」という教義に強く感銘する人は多くはないのではないでしょうか。ということは、多くの人は、グレコのこの絵の、形・色・構成(形式)を愛でることになるでしょう。そう割り切ると、グレコの作品の現代にも通じる良さが見えてくるような気がします。

グレコの作品全体を通じて、私が感じるのは、

  • 画面の中の空間に「ねじれ」が感じられ、それが絵を観ている人の空間にまで影響を及ぼすように見えること
  • 赤、青、黄色など、大きな色面の対比が心地よいこと
  • 衣を描く、大胆な筆致に魅せられること
  • 人物の顔に現れる、その人の意志のようなものから、眼をはなせなくなること
絵の見方は人それぞれでしょうが、私には眼をはなせなくなるような作品が多かったことは間違いありません。これは見に行くべき展覧会だと感じました。

東京都美術館のエル・グレコ展は2013年1月19日から4月7日です。

(いつも展覧会に行った後、図録を買おうかどうか迷いますが、今回の図録はテキストが充実していたので、迷わず買ってしまいました。)


2013年1月13日日曜日

会田誠 天才でごめんなさい 森美術館

森美術館の「会田誠 天才でごめんなさい」展に行ってきました。以前地震でエレベータが停まっていて、他に廻ってしまったので、再チャレンジです。

会田誠の作品は、《大山椒魚》《美しい旗(戦争画RETURNS)》《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》などを観たことがありましたが、これだけの作品が集まると壮観です。
こんなことを描いてはいけないのではないかというような自己規制をすべて外して、社会・歴史・戦争の「これは変だよ」、少女趣味、猥雑さへの嗜好、死への憧憬、などを全て掛け算してみると今回の展覧会になります。

好き嫌いはいろいろあるでしょうが、ここにあるのは、文書では伝わらない、造形ならではの表現であることは間違いありません。美術手帖の1月号でも特集されています。

「会田誠 天才でごめんなさい」展は2013年3月31日まで開催です。


手の痕跡 国立西洋美術館

国立西洋美術館で「手の痕跡」展を行っています。内容は、ロダンとブールデルの収蔵品展で、彫刻が60点以上展示されています。素描も22点あります。

ロダンは1840年生まれ1917年没です。モネが1940年生まれ1926年没ですから、ロダンは印象派の画家たちと同じ世代ですが、もっと古い人のように感じていました。当時の先端をいく絵画は「ものがたり」から離れて行ったのに対して、ロダンの作品は強く「ものがたり」と結びついているために、古いと感じていたのかもしれません。

改めてじっくり観賞すると、実物の人間では骨折してしまうようなありえないような造形がされていて、それがドラマチックな感情を生んでいたり、新古典主義の滑らかな表面とは違った表面のラフさなど、なるほどこう表現しているのかという発見がたくさんありました。

2013年1月27日まで開催されていますから、彫刻好きな方はもちろん、たまには彫刻を見ようかという方は、行ってみたらどうでしょうか。同時に『Fun with Collection 2012 彫刻の魅力を探る」というプログラムが開催されていて、ブロンズ像の造り方、大理石像の造り方など、丁寧に説明してあるので、こちらも必見です。





2013年1月4日金曜日

東京国立博物館 東洋館リニューアル・オープン

新年おめでとうございます。

2013年1月2日から、東京国立博物館の東洋館がリニューアル・オープンされ、早速2日に見にいかれた方から、良かったという話を聞きましたので、私も続いて行ってきました。

さすがに展示も多く、午後1時から5時の閉館まで時間を費やしてしまいました。私が興味を持ったのは、

・馬家窯文化の焼物
・左に写真を載せた揺銭樹
・漢代画像石
・唐三彩の壺
・宋代の青磁
・朝鮮の白磁
・中国染織の緙絲(こくし)

などたくさんありました。もちろんガンダーラの仏像や、中国石窟の仏像は期待通りです。

なかでも一番の見所は中国絵画でした。南宋の李迪筆の《紅白芙蓉図》、これは精妙な花の表現に見入ってしまいます。もう一つは、清の乾隆帝が愛蔵していたという北宋の李という作家の《瀟湘臥遊図巻》、この柔らかいタッチの水墨は何とも言えないですね。この2点は1月27日までの展示ですから、興味のある方はぜひ早めに行くことをお勧めします。

今日は、本当に偶然ですが、東洋館で知り合い2人に会いました。皆さん、東洋間のオープンを待っていたと見えます。嬉しいですね。