2013年3月24日日曜日

「アートフェア東京 2013」「G-tokyo 2013」

このブログではいつも展覧会の話題が多いのですが、今日は今2つ同時に開催されている、「アートフェア東京 2013」と「G-tokyo 2013」という2つのアートフェアを、いつもギャラリー巡りをしている皆さんと一緒に見に行きました。

美術品を鑑賞するスペースである展覧会と、美術品の市場であるアートフェアでは、その雰囲気も違いますし、作品との対話のしかたも違うということを、あたりまえですが再確認しました。一言でいうと集中するのが難しいということです。これはいくらなんだろうなどという邪念が入り込んできます。これは売れていますよという赤いマークも気になります。

そうは言っても、こっちを見てくれと呼んでいるような、楽しい出会いがあります。
今回私を呼んでいたのは、「G-tokyo 2013」にMISA SHIN GALLERYが出していた、アイ・ウェイウェイの作品です。一つは、圧縮したお茶の葉を立方体にした作品、もう一つは、景徳鎮で焼いた豆状のものに彩色したものをガラスのジャーに収めた作品でした。自然素材を使った作品、自然作品を模した素材を使った作品には、自然と人の関係を考えさせるようなものもあります。また、圧縮したお茶の葉が見せる面の触感、陶器で作った豆の触感といった、感覚にダイレクトに迫るものもあります。

今後もアート・フェアーはフォローしたいなと思い、また機会があれば買ってみたいなと思った一日でした。

2013年3月17日日曜日

ラファエロ展、国立西洋美術館

現代にいたる美術は、ルネサンスそれも特にラファエロからどう発展させるか、またラファエロをどう否定するかを、追求していった歴史だといえるのだと思います。
というわけで、ラファエロ自筆の作品を見られる機会が東京であるのなら、見に行かないというわけにはいきません。

今回は、国立西洋美術館、フィレンツェ文化財・美術館特別監督局、読売新聞社、日本テレビ放送網が主催し、フィレンツェ文化財・美術館特別監督局長官が総合監修を行う形で開催されています。

出展作品のうち22点が、ラファエロ・サンティ本人の作ですから、ビッグ・ネームが展覧会のタイトルになっていても、ほとんどが工房の作品であったり、周辺の画家の作品であったりする展覧会とは一線を画しています。作品も、ウフィツィ美術館、カポディモンテ美術館、ペルガモ・アカデミア・カッラーラ絵画館、ブタペスト国立西洋美術館、ルーブル美術館、フィレンツェ・パラティーナ美術館、ウルビーノ・マルケ州国立美術館、J・ポール・ゲッティ美術館、プラド美術館、ヴァチカン美術館と、様々なところから集められています。

改めて作品を目にして感じたのは、見たままそのものを再現的に表現したものではなく、対象を理想の比例配分で見直し、輪郭線の美しさを強調し、筆の跡を消すことにより描くという行為に気づかせないようにした作品であるということです。ヴェネチア派とは異なる調和がとれた色の使い方や、細かく書き込まれたアクセサリーの繊細さも目を引きます。
ラファエロは伝統・権威のもとになってしまっていますから、ラファエロには興味が無い・好きではないという方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ現物の作品にあたって見たらどうでしょうか。私は純粋に気に入りました。
図録の中には、「ラファエロと16世紀の装飾芸術の革新」というテキストも載っています。16世紀宝飾に目をつけて、作品を見てみるというのも面白いかもしれませんね。

「ラファエロ展」は国立西洋美術館で、2013年4月19日までの開催です。

2013年3月8日金曜日

フランシス・ベーコン展 東京国立近代美術館

フランシス・ベーコン、気になる作家です。1909年ダブリンで生まれて、ロンドンで仕事をし、1992年に亡くなっています。つまり、フランスでの美術界の変革、第二次世界大戦を挟んでの、アメリカ美術の隆盛の中で、それらのムーブメントから離れて、特異な作品を作り続けたわけです。

フランシス・ベーコンに関するイメージは、ベラスケスが描いたインノケンティウス10世の肖像画を翻案した作品に見られる、人の肉体と精神をエキセントリックにデフォルメしたような作品を描く作家というものです。そして、そんな作品は人間に対するシニカルな追求が生んだのではないかというものです。

とにかく、早く観てみたいという想いから、東京国立近代美術館の「フランシス・ベーコン展」の初日に行ってきました。

作品の分析的な話はこれから良く考えてみることにして、今日は実物を観ての印象を整理してみたいと思います。
まず、そうだったのかと思ったのは作品のサイズが思っていたよりも大きいということ。このサイズは、作品を分析的に鑑賞するというサイズではなく、また抽象表現主義のオールオーバーな作品のように環境になってしまうようなサイズではなく、まさに絵と観る人が対峙するようなサイズであったということです。つぎに、事前に予想していなかったことは、その画面が表現する内容に、そうだそういうふうにも感じられると、共感できたということです。周囲の空間と浸透しあう人間、肉的である人間、異形な形になった人間、浅い囲われた空間の中にいる人間に、そうだよねと思えるという感覚です。

まだ、一言でフランシス・ベーコンは何かとは言えませんが、やはりここには何かあるなという思いがわいてきます。ぜひ、いろいろなテキストも読み、また展覧会にも足を運び、フランシス・ベーコンとは何かを読み解きたいと思っています。

フランシス・ベーコン展は、東京国立近代美術館で2013年5月26日までです。

2013年3月2日土曜日

「奇跡のクラーク・コレクション ― ルノワールとフランス絵画の傑作」展 三菱一号館 

今日は久しぶりに東京都現代美術館に行こうと思ったのですが、休館中だということを思い出して、三菱一号館美術館へ。三菱一号館美術館では、クラーク・コレクションの印象派を中心とした展覧会が開催されています。

クラーク・コレクションはスタンリーングとセシール・クラーク夫妻により、1910年からフランスで収集されました。そしてそのコレクションは、マサチューセッツ州のボストンからかなり西に行ったところにある、1955年に造られた美術館に収蔵されました。
現在コレクションの中から19世紀フランスの絵画が3年間の海外巡回に出ています、今回の三菱一号館の展覧会はその一環です。

展示は、ルノアールが一番多く、他にピサロ、シスレー、モネ、など印象派を中心とした19世紀のフランス絵画です。私は、最近ブリジストン美術館の「筆跡の魅力 点・線・面」を観てマチエールへの関心が高まっていたせいもあると思いますが、それぞれの作品の筆致の美しさを強く感じました。もちろん一点ごとに良いもの、それなりに良いものと、あるのですが、全体を通して楽しめたという感じです。

今回の出品作がクラーク美術館のWEBからも見えますので、こちらも参照してみたらどうでしょうか。
http://clarkart.edu/slideshows/milan/image-gallery/

「奇跡のクラーク・コレクション」展は、三菱一号館美術館で2013年5月26日まで開催です。印象派のファンの方はぜひ見に行くと良いと思います。クラーク・コレクションはニューヨークからもボストンからも車で3時間位かかるところにあるようなので、現地に行くのもたいへんですから。