2013年11月16日土曜日

バルビゾンへの道 Bunkamuraザ・ミュージアム

ときどき名前ではその内容が良くわからない展覧会があります。「バルビゾンへの道」展もそうかもしれません。

山形県山形市山寺には、後藤季次郎氏の収集品を展示する、山寺後藤美術館があります。今回の展覧会は、その後藤美術館の所蔵品から70点の絵画作品を展示するものです。内容は16世紀から19世紀にかけての物語画、肖像画、風景画、静物画です。そういうわけで、バルビゾンだけに反応して会場にいくと、なにこれということになります。それでも、日本では名前はあまり知られていなくても、当時のアカデミーの絵画ってどんなものという興味がもてるなら、楽しめる展覧会だと思います。もちろん、バルビゾンもありますので、そこだけを目指して観るということでも良いでしょう。

私が良いと思ったのは、シャルル=フランソワ・ドービニーの《川辺の風景》でしょうか。

Bunkamuraザ・ミュージアムでの「バルビゾンへの道」展は2013年11月18日までの開催です。

2013年11月5日火曜日

古径と土牛 山種美術館

20世紀の「日本画」というのはどうも苦手な領域です。小林古径は1883年生まれ1957年没、奥村土牛は1889年生まれ1990年没ですから、どうみても20世紀の画家です。ちなみにピカソは1881年生まれ1973年没。デュシャンは1887年生まれ1968年没ですから同じ世代です。そこでどうも腑に落ちないのが、確かに古径の花はきれいだし、ネコはキュートだし、清姫はすさまじいのですが、なぜ20世紀にこれを描かなければいけないのかです。

分らないものは追求したいということで、山種美術館の「小林古径生誕130年記念 古径と土牛」に行ってきました。確かに、古径《清姫》連作の「寝所」の、白い衣を掛けて寝ている安珍、撫子色の十二単を着て屏風から除く清姫、全体を引き締める黄色の几帳の色の対比は見事だし、土牛の《蓮》のこの世のものとはおもえない緑色の雲に浮かぶ蓮の花には引き込まれるのですが。でも、「それでどうしたの」という思いはどうしても残ってしまいます。そこで何となく納得したのが、山種美術館で売っていた図録の最初のページに載っている、小林古径の写真を見たときでした。そこには、古径と土牛が着物を着て絵を描いている写真がのっていました。たぶん、着物を着て絵を描くような生き方が良くわかっていないから、古径や土牛が分らないのではないだろうかと。

そんなことを考えながら山種美術館を出て21世紀の恵比須に戻ってきましたが、どうもまだ良くわからないからまた見てみたいが続きそうです。

「小林古径生誕130年記念 古径と土牛」は山種美術館で2013年12月23日までです。


2013年11月2日土曜日

ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 印象派を超えて点描の画家たち 国立新美術館

あまり期待しないで観に行ったところ、素晴らしく良かったという展覧会があります。「ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 印象派を超えて点描の画家たち」は、まさにそんな展覧会でした。なにしろ展覧会の名前が長い、しかも「ゴッホと色彩の旅へ」とのサブタイトルまでついています。これってどんな展覧会?という感じです。

その内容は、オランダのオッテルローにあるヘレーネ・クレラー=ミュラー氏のコレクションを展示するクレラー=ミュラー美術館の作品を日本にもってきたものです。図録のテキストで長尾光枝氏は、「本展覧会は、ジョルジュ・スーラが開拓し、その盟友であるポール・シニャックが普及させた「分割主義(Divisionism)」という理念とその実践に着目することにより、モダンアートを特徴づけるひとつの類型を掘り出そうという試みである」と書いています。最初からそう言ってくれれば分かりやすかったのにと思います。

点描と良く言われますが、点であることに注目せずに、色を独立させ分割し網膜上で視覚混合させることに意味があると捉えると、「分割主義」になるということです。そう考えると、スーラやシニャックの「分割主義」の成果はゴッホにつながり、さらにそれをモンドリアンが深化させ、ついにモンドリアンの幾何学的抽象にまでつながっていきます。

この展覧会では、様々な「分割主義」の作家を観ることができます。スーラやシニャックはもちろん、アンリ=エドモン・クロス、マクシミリアン・リュス、モーリス・ドニの作品があります。ゴッホも「分割主義」の視点で観ることができます。私が気に入ったのはゴッホの《じゃがいものある静物》。ベルギーとオランダの「分割主義」者、テオ・ファン・レイセルベルヘ、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド、ヤン・トーロップなどフランスの「分割主義」に比べ精神主義的、象徴主義的な作品にも惹かれる所があります。

モンドリアンも、1903年のまだ具象的な《ヘイン河畔の樹》、「分割主義」らしい1909年の《砂丘》、普遍的な美を目指した1913年の《コンポジションNo.11》、成熟期のモンドリアンらしい1927年の《赤と黄と青のあるコンポジション》などが展示されています。《コンポジションNo.11》の前ではずっと長く立ち止まって観てしまいました。

たいへん楽しめる展覧会でした。「ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 印象派を超えて点描の画家たち」は国立新美術館で、2013年12月23日までです。展覧会タイトルに惑わされずに観に行ってはどうでしょうか。