2013年8月26日月曜日

曼荼羅展 宇宙は神仏で充満する! 根津美術館

根津美術館所蔵の、平安、鎌倉、室町の曼荼羅の展覧会。
いつもの、東洋美術、日本美術を学習している方々といっしょに観にいってきました。

曼荼羅といったら金剛界曼荼羅、胎蔵曼荼羅の両部曼荼羅が思い浮かびますが、今回は両部曼荼羅はもちろん様々な曼荼羅が展示されていて楽しめます。
金剛界の八十一尊で構成される《金剛界八十一尊曼荼羅》。
浄土教系の観無量寿経に基づく《当麻曼荼羅》。
珍しい弥勒の浄土を描く《兜率天曼荼羅》。
本地垂迹説により本地を表す《日吉山王本地仏曼荼羅》。
垂迹神を表す《日吉山王垂迹神曼荼羅》。
春日宮の《春日宮曼荼羅》。

密教の目的別の別尊曼荼羅として、
善無畏訳の儀軌に基づく《尊勝曼荼羅》、不空訳の儀軌に基づく《尊勝曼荼羅》。
日輪をかかげる《愛染明王像》、宝珠を捧げる《愛染明王像》。
記憶力増進の《求聞持虚空蔵菩薩・明星天子像》。

昔の人の、宇宙を理解しようとする熱意、現世利益を追求する強い意志が、みえてくるようです。

「曼荼羅展 宇宙は神仏で充満する!」展は、根津美術館で、2013年9月1日まで開催です。

2013年8月24日土曜日

谷文晁 サントリー美術館

江戸時代後期の画家として谷文晁という名前は聞いたことがあります。TVのお宝番組にもよく出てきます。でも谷文晁ってこういう画家だと言うイメージが湧いてきません。

今回のサントリー美術館の「谷文晁展」にいくと、その理由がわかります。谷文晁は、文人画の伝統にたちながら、中国清朝の画家で日本にも来ていた沈南蘋(しんなんびん)の絵も勉強し、明代の画院系の画派である浙派も取り入れたということです。つまり何でもあり。そういうわけで、これが文晁だという色がわかりにくいのだと思います。

また、社会人としても、松平定信とも親しく、酒井抱一ら文化人とも親交を結び、渡辺華山など弟子もたくさんもつという、人のネットワークをしっかり作った人だったようです。

誤解を恐れずに言えば、谷文晁は優秀で良い人のようだけれども、何か突き抜けたところのない人だったのかもしれません。先品も中途半端なように見えてしまうのは、そんな先入観のせいでしょうか。

そんな中で、こんな作品も制作したのかと思ったのが、《文晁夫妻影像》という、文晁と奥さんの阿佐子の二人の横顔のプロフィールをシルエットで描いた作品。どうして突然このような絵がでてきたのか興味がわきます。

サントリー美術館の「谷文晁 生誕250周年」は、明日(2013/8/25)までの開催です。

2013年8月19日月曜日

アンドレアス・グルスキー展 国立新美術館

現代美術の中で写真は外せないということで、今日はアンドレアス・グルスキー展へ。

ここ10年ギャラリー向けの写真でもっともよく使われるスタイルは、無表情という意味のデッドパンだといわれています(シャーロット・コットン『現代写真論』より)。デッドパンはクールで、超然としていて、大きく、鮮烈なところが特徴だそうです。その中でも代表的なのが、デュッセルドルフ芸術アカデミーのベルント・ベッヒャーのもとで学んだアンドレアス・グルスキー(1955−)だといわれています。

グルスキーの写真は何と言っても大きい。《フランクフルト》という飛行場の掲示板が写されている作品は、縦237cm、横504cmもあります。そして対象から離れたところから見る視点をとっているにもかかわらず、すみずみまで鮮明な画面になっていることが衝撃的です。ディスカウントショップの陳列棚を撮った《99セント》、パリのアパルトマンの並んだ窓を撮った《パリ、モンパルナス》、北朝鮮アリラン祭のマスゲームを撮った《ピョンヤン》、地下1000メートルにあるニュートリノ検出装置を撮った《カミオカンデ》。商品取引所に人が密集しているのを撮る《シカゴ商品取引所Ⅲ》。
このような作品は、アナログの大判カメラで撮影し、現像したネガをスキャナーで読み取り、修正を掛けた後、画像を繋ぎ合わせ、でき上がったデータを再びネガに焼き付けてプリントするそうです。

今回は、このような大きく鮮明だけでない、油やゴミにまみれた川面を瞑想的な雰囲気で見せる《バンコク》シリーズ、衛星写真をデジタル処理で加工した《オーシャン》シリーズなども出展されています。

人は何を見ているのか、それを改めて考えるようにと、迫ってくるような展覧会でした。
現代美術に関心ある方には、ぜひ見ることを薦めたい展覧会です。国立新美術館で2013年9月16日まで開催されています。

2013年8月9日金曜日

三菱一号館美術館 浮世絵 珠玉の斎藤コレクション Ⅱ

三菱一号館美術館で開催している。「浮世絵 珠玉の斎藤コレクション」展は、3回展示替えがあります。今開催しているのは2期目で、江戸後期の風景画を中心にした展示になっています。早い話が、葛飾北斎の《冨嶽三十六景》と、歌川広重の《東海道五拾三次之内》があります。他にも国芳なんかも展示されています。展覧会のWEBを見ると「江戸のツーリズム」という趣向のようです。
ここはぜひ、北斎の力づくで面白いものにしてしまう奇想と、広重のその場所の魅力を引き出す力を比べてみたいところですが、改めて両者を比較して、どちらか一方は選べないな・・・・でした。
2期は8月11日までで、3期は8月13日から「うつりゆく江戸から東京」になります。3期には小林清親の「光線画」が出展されるようで、これも楽しみです。


国立新美術館 アメリカン・ポップ・アート展

国立新美術館で、「アメリカン・ポップ・アート展」が今週から始まりました。展覧会の企画としては、アメリカのコレクターのコレクションを持ってきて展覧会にするというありがちなものですが、ポップ・アート作品をまとめてみられるめったにない機会ですから、これは行かなくてはいけないと、さっそく覗いてきました。

今回の展示は、アメリカのコロラド州を本拠にする、ジョン・アンド・キミコ・パワーズ夫妻のコレクションで、ポップ・アートの前段階の、ロバート・ラウシェンバーグやジャスパー・ジョーンズから始めて、ラリー・リヴァーズ、ジム・ダイン、クレス・オルデンバーグ、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、メル・ラモス、ジェイムズ・ローゼンクイスト、トム・ウェッセルマンとなっています。

以下は私の観想です。

  • ロバート・ラウシェンバーグ。人は色々なものを見ている、イメージ、シンボル、イコン的なもの、絵具の塗り後。それならそれをまとめて、それぞれの価値をフラットにして、並べて混ぜ合わせて作品にしてしまおう。ラウシェンバーグはそう思ったのではないでしょうか。改めて見て、これは面白いと感じます。
  • ジャスパー・ジョーンズ。平面上に立体を描くことに気を使うなんて止めよう。平面には平面を描けばいいじゃないか。そうかもしれないけれど、ちょっと退屈。
  • クレス・オルデンバーグ。ここまで、何でも柔らかくしてしまえば、もうなにも言うことなし。
  • アンディ・ウォーホル。見知った作品ばかり。でもこの大きさでこの彩度の高い色を見ないと、本当のウォーホルじゃない。改めて見て良かった。
  • ロイ・リキテンスタイン。漫画の女性を拡大しドットでいっぱいにした作品も良いけれど、モネのルーアンの大聖堂をリキテンスタイン風にした作品や、立体作品もおもしろい。
  • トム・ウェッセルマン。人間(というか女性)をコマーシャルなイメージにフォルム化しコンポジションにしてしまう。これはこれで行き着く所まで行き着いているようには思うけれど、この先どうなるんだろう。
アメリカン・ポップ・アート展は、2013年10月21日までです。