2013年2月24日日曜日

中近東文化センター改修記念 オリエントの美術 出光美術館

出光美術館が収集したオリエントの美術は、1979以降三鷹市の中近東文化センターで展示されています。今回はその所蔵品の中から厳選して出光美術館で公開するという企画になっています。2013年1月11日から3月24日までの開催です。

展示の章立ては、
  1. 文明の誕生 エジプト文明とメソポタミア文明
  2. ローマ時代の技術革新 ガラスの美
  3. 実用の美 イスラーム美術
気に入ったのは、イラン、エジプトの動物のモデルにした造形。それにイラクの象牙細工。紀元前に、動物の生き生きとした姿をこんなに捉えられているというのは驚異的です。いまなら写真に撮って研究するのでしょうが、見る目が素晴らしかったのだと思います。
ローマのガラスも技術の流れがわかって面白い展示でした、ガラスと言っても最初は不透明なものだったのが、だんだん発展して行ったのがわかります。
イスラーム美術は、今回は実用に供される皿のようなものが多かったせいか、一目見てこれはすごいというようなものは少なかったように感じました。イスラーム美術に関してはもっと勉強が必要のようです。

2013年2月23日土曜日

国立国際美術館 夢か、現か、幻か 全てが映像作品

昨日は大阪に出張、金曜日で美術館は夜まで開いているということで、中之島の国立国際美術館へ。実は、今どんな展示がされているのか知らずに行ったのでですが、企画展はタイトルにもあるように全て映像作品の「夢か、現か、幻か」展が、所蔵品展は「コレクション現代美術とテーマ」展が開催されていました。
実はビデオ作品は少し苦手、なぜかというと相手(作家のことです)に合わせて、ある時間つきあわなければいけないからです、造形作品はこちらの好きなように作品に対することができるんですが・・・・。しかも昨日は時間がありませんでした。というわけで、映像作品をつまみ食いするという不本意な観賞になってしまいました。

それぞれの作品に勝手な感想を付け加えてみると。

  • 饒加恩(ジャオ・チアエン) Chia-En Jao(台湾出身、台北在住)、《レム睡眠》、東南アジアから台湾に出稼ぎにきた若い女性たちが、皆がさまざまな場所で眠り、一人づつ眠りの姿勢のままで現実とも夢ともつかない話を話し、また眠りにつく作品
  • ヨハン・グリモンプレ Johan Grimonprez(ベルギー出身、ブリュッセル在住)、《ダブル・テイク》、ヒッチコックのそっくりさんの世界は虚の世界か
  • スティーヴ・マックィーンSteve McQueen(イギリス出身、アムステルダム在住)、《ワンス・アポン・ア・タイム》、数式、記号が、時間の流れと、宇宙の広がりを示して・・・・
  • シプリアン・ガイヤールCyprien Gaillard (フランス出身、ベルリン在住)、《ArteFacts》、バビロンの遺跡と現代のイラクの兵士が共存する奇妙さ
  • さわひらき Hiraki Sawa(石川県出身、ロンドン在住)、《Lineament》、それはレコードの溝
  • チョン・ソジョンSojung Jun(韓国出身、ソウル在住)、《ある裁縫師の一日》、古くさくなって行く技術は見捨てられるべきものか
  • 杜珮詩(ドゥ・ペイシー) Pei-Shih Tu(台湾出身、台北在住)、《ヴィジブル・ストーリー》、明るいアンリ・ルソー的な映像、でもそこにいる人間は・・・
  • エイヤ=リーサ・アハティラ Eija-Liisa Ahtila(フィンランド出身、ヘルシンキ在住)、《受胎告知》、大きな三方を囲むスクリーン上に、受胎告知を演じようという人たち、そのあとに見つかるものは
  • クレメンス・フォン・ヴェーデマイヤー Clemens von Wedemeyer(ドイツ出身、ベルリン在住)、《死への抗い》、創られた未開人発見、事実はどこに
  • 柳井信乃(ヤナイシノ) Shino Yanai(奈良県出身、横浜在住)、《UTSUTSU NATION》、若いひよわそうな女性が、玩具のようなハンマーを振り下ろすと、すべてを吹き飛ばすような大爆発が
大阪なので、東京の人が見に行くのはたいへんかもしれませんが、国立国再博物館で「夢か、現か、幻か」は3月24日までです。

2013年2月17日日曜日

ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー二人の写真家 横浜美術館

もともとロバート・キャパという人物がいなかったとは知りませんでした。ロバート・キャパは、ハンガリー生まれのアンドレ・フリードマンと、シュトットガルト出身のユダヤ系ポーランド人ゲルダ・タローが作り出した架空の人物です。二人とも戦場で作品を作り続けた戦場カメラマンです。もちろん架空のロバート・キャパが撮った写真も戦場写真でした。ゲルダ・タローがスペイン戦争の従軍で26歳で若く死んでしまうと、アンドレ・フリードマンが一人でキャパの役を担うことになったという訳です。

今回の展覧会は、ロバート・キャパ誕生に重要な役を果たしたゲルダ・タローの写真が最初に展示されています。これは2007年にニューヨーク、ロンドンなどを巡回した展覧会を日本にもってきたものです。後半は、ロバート・キャパ(つまりアンドレ・フリードマン)の展示で、横浜美術館所蔵の全作品を展示するものです。どちらも、メインのテーマは戦場写真です。

初期のゲルダ・タローの写真は、構成が明確で、写っている人々、例えば人民戦線軍の女性兵士なども自信に満ちあふれていて、危機的な状況にあるというよりも、目的達成に向けて、ある意味楽しそうです。つまり、プロパガンダ的な写真になっています。よくできた写真だとは思いますが、それで良いのかという気もします。その後は、スペインでの共和国側の戦況も悪くなり、戦死者の写真も多くなります。でも80年の歴史が、写真からメッセージを抜き去り、今ではただのBODYの写真だと思えてしまうのは、私だけでしょうか。

ロバート・キャパ(つまりアンドレ・フリードマンの方)は、スペイン戦争、中国戦線、ノルマンディーからフランス解放、インドシナの独立戦争と、こちらもずっと戦場写真です。キャパの写真からは、単純に敵と味方で割り切れない、複雑な思いを持ちながらも、写真というメディアがもっているパワーを強く感じました。その場にいないと見えてこない記録媒体としての性格、良いにつけ問題があるにつけそこにある強いメッセージ、強い造形的構成力。ありきたりな言葉で申し訳ないのですが、そこには人がいるということだと思います。

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー二人の写真家」展は、横浜美術館で2013年3月24日までです。

会田誠展 森美術館 2度目の訪問

会田誠展にまた行ってきました。今回は解説していただける方もいて、グループで見に行ってみようというのりです。美術手帳の1月号の特集記事も読んで、新たな発見もあるかな?

新たな発見は、BTという文字がかかれたデッサンを巨大化した作品は、美術メディアや美術教育に対するアイロニカルな表現であることとか、戦争がリターンズは焼酎のケースの上に古い襖を使って表現されていることなど、多々ありました。トリビア的な発見では、《灰色の山》のなかにはウォーリーを探せのウォーリーがいるとか・・・・。

今回改めて、会田誠の作品には、意味がたくさん溢れている。そしてその意味を文字ではあらわせない造形表現として表しているところに、すごさがあると感じさせられました。さらに付け加えるなら、その意味は現代の日本という背景の中で意味を持つものが多く、グローバルであったりユニバーサルであったりする価値観とは離れたところで成立しているということも、面白く感じました。そこが、日本の我々には、ざわざわ感、むずむず感、快と不快の間の違和感になり、迫ってきます。

会田誠展は3月いっぱい開催されています。

2013年2月12日火曜日

書聖王羲之展 東京国立博物館

中国では最高の芸術は王羲之の書だそうです。王羲之に関しては中国美術の講座で話を聞いているのですが、やはり私にとって書は敷居が高いので、どうかなと思いながら東京国立博物館の「書聖王羲之展」へ。びっくりしたのは会場が混雑していることです。こんなに書のファンは多いんだと改めて感じました。しかも、書は低い位置に展示されているので、見るのがたいへんです。

書の敷居が高いのは、コミュニケーションの記号であるはずの文字が観賞の対象になっているためだと思います。しかも読めない。さらに王羲之の場合には、現存する真筆はなく、模写か拓本になっていて、もともと一つの王羲之の作品のはずがいろいろあり、それぞれかなり差異があります。これをどう見たら良いのかも?????

これはいけないと思い、帰りにミュージアム・ショップで『もっと知りたい書聖王羲之の世界』を買ってしまいました。もうちょっと勉強してみます。

東京国立博物館の「書聖王羲之展」は2013年3月3日までです。

2013年2月11日月曜日

ブリヂストン美術館収蔵品展 筆あとの魅力 − 点・線・面

ブログを書くのが遅れていますが、先週の金曜日の夜にブリヂストン美術館へ。週末の夜、気楽に行く場所として、ブリヂストン美術館はお気に入りです。

今は、収蔵品の中から28点を選び、筆の跡に眼をつけて楽しもうという企画が開催されています。いつも見ている絵が多いのですが、あらためて近くに寄って、筆遣いを見ると、あらためて絵の良さを感じることができます。

展示は、点に注目、線に注目、面に注目と分かれていて、それぞれ次のような作品が展示されています。

【点】
新印象派のポール・シニャックの《コンカルノー港》
日本の点描画家、岡鹿之助の《雪の発電所》
このへんは点描の人たちですからわかりますが、ゴーガン、モンドリアン、青木繁も点に注目すべき作品があるのがわかります。

【線】
カンディンスキーの《日本の線》
ミロの《絵画》
抽象絵画の人が線には登場します。その他には輪郭線の面白さを追求した藤田嗣治や猪熊弦一郎の作品があります。

【面】
ゴーガンの《乾草》
セザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》
安井曾太郎の《薔薇》
印象派の後には、もう一度面への関心が高まったということでしょうか。ポスト印象派の作品が展示されています。

これらの作品を見ていると、20世紀モダニズムの絵画は、それまでの内容重視の絵画から脱却し、メディウムを見せるようになったことが良くわかります。

ブリヂストン美術館、「筆あとの魅力−点・線・面」は、2013年3月10日までです。

2013年2月4日月曜日

那智瀧図 根津美術館

昨日《那智瀧図》を見に根津美術館へ。

熊野の那智の瀧を描いた図です。縦長の画面に瀧だけが浮き出しています。もちろん瀧壺の周りには、よく見ると、樹も社殿も、いわくありげな塔婆も描かれているのですが、何と言っても瀧です。これだけで絵にしてしまう、すばらしい表現力です。見に行ったかいがありました。

今回の展覧会には、《那智瀧図》だけでなく、仏教説話画のおもしろいものも出展されています。《絵過去現在因果経》《釈迦八相図》《仏涅槃図》《羅漢図》《天狗草紙絵巻》《善光寺縁起絵》。全巻の一部だけの展示であったり、絵の状態が良くないものがあったりして、それぞれの話の筋を理解するのは難しいのですが、人の表現が生き生きしているものが多く、楽しめます。

もちろん、根津美術館に行ったら、中国商時代の青銅器も見逃せないので、こちらにも再会してきました。

根津美術館の「新春の国宝那智瀧図 —仏教説話画の名品とともに—」展は、2013年2月11日までです。