2012年5月27日日曜日

「至高の中国絵画コレクション」 静嘉堂文庫美術館

静嘉堂文庫創設120周年・美術館開館20周年記念として、静嘉堂文庫美術館で、「受け継がれる東洋の至宝」というシリーズで展覧会が企画されています。


Part1が2012/4/14-6/24に「東洋絵画の精華 ― 名品でたどる美の軌跡 ―」、Part2が2012/9/22-11/25に「岩﨑彌之助のまなざし ― 古典籍と明治の美術 ―」、Part3が2013/1/22-3/24に「曜変・油滴天目 ― 茶道具名品展 ―」となっています。


Part1はさらに前半と後半に分かれて、前期が「珠玉の日本絵画コレクション 4/14-5/20」、後期が「至高の中国絵画コレクション 5/23-6/24」です。


「至高の中国絵画コレクション」に行ってみました。静嘉堂文庫美術館はちょっと交通が不便で、東急田園都市線の二子玉川からバスで10分くらいになります。バスは1時間に3本程度なので美術館のWEBで事前に時間を確認して行くと良いかもしれません。


今回の目玉は、何と言っても、日本の絵画に大きな影響を与えた、南宋/元の絵画でした。
いつも名前が出てくる、牧谿、夏珪、馬遠関連が「伝」も含めてですが揃っています。

  • 伝馬遠、《風雨山水図》、南宋・13世紀
  • 牧谿、《羅漢図》、南宋・13世紀
  • 伝夏珪、《山水図》、南宋-元・13-14世紀
道釈人物画も、ユーモラスで面白いですね。

  • 因陀羅 楚石梵埼題、《禅機図断簡 智常禅師図》、元・14世紀
  • 虎巌浄伏題、《寒山図》、元・13-14世紀
入場券は、「受け継がれる東洋の至宝」シリーズの展覧会の次回割引券も兼ねていますので、また行ってみる事にしましょう。


2012年5月19日土曜日

会期間際で、曾我蕭白展へ

千葉市美術館で、5月20日まで「蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち」展が開催されています。

会期も最後になって慌てて行ってきました。なぜ今まで行かなかったかというと、どうも蕭白は好きになれないだろうという予感があったため、では、なぜ行ったかというと、東京博物館で行っている「ボストン美術館 日本美術の至宝」にあった蕭白の「雲龍図」を見たためです。

なぜ蕭白が好きになれないだろうと思っていたかというと、曽我派という古くさい絵を元にして、マンガのキャラクターのような珍妙なテイストを加えて、なんとか受けを狙っていた絵師だろうと思っていたからです。

見た結果は、蕭白の事をものすごく好きにはなれないまでも、蕭白はすごいなと思いました。また機会があればまた見たいとも思いました。

理由の一つは、タッチのダイナミックさ。《牧童群牛図屏風》の牛がすごい。《唐獅子図》の獅子は、なんなんだこれは。

気持ち悪いだろうなと思っていた、問題の、《群仙図屏風》は、気持ち悪い前に表現力にびっくり。龍にのっている仙人の着物の乱れ具合、龍が巻き起こしている大気の渦巻き、ガマをかまっている女性の服の模様の緻密さ(これは図版ではわからない)、そしてこんなに変なものがたくさん描いてあるのに、全体として構図が破綻していない事。すごいですね。

《群仙図屏風》の左側にひっそり置かれていた、《美人図》もすごい。裸足で立って、物理的にあり得ないようなバランス、そしてなんとぼろぼろに破れた手紙を噛んでいる図です。同じ手紙つながりでもフェルメールの静謐な感じとはなんという差なんでしょうか。

というわけで、私に取っては新発見がたくさんあった、曾我蕭白展でした。いままでの食わず嫌いはなんだったんだと、少し反省。


2012年5月13日日曜日

アンリ・ル・シダネル展

なんでも行ってみようシリーズです。
つまり、好きかどうかわからないし、だめかもしれないなと思いながら、でもそれならそれでいいじゃないかと思って行ってみる、シリーズです。

アンリ・ル・シダネルのことはよく知りませんでした。損保ジャパン東郷青児美術館の展覧会のポスターには、「薔薇と光の画家」「フランス ジェルブロワの風」と書いてあります。なんだこれはと言いながら、新宿まで出かけてみました。

会場のパネルを読むと、アンリ・ル・シダネルは、1862年モーリシャス島生まれ(スエズ運河ができるまえインド航路の寄港地として栄えたそうです)、1939年没ですから、19世紀末から20世紀にかけて絵画の世界も大変革の時代に生きていたわけです。それでもその中で、アカデミーに反旗を翻すこともあまりなく、印象派の技術も取り入れて、穏やかな風景画や室内画を描いた人のようです。

どうも個人的には食指が動かないタイプですが、見れば好きになるかも知れない。

作品の主なテーマは、フランスの地方の風景画、庭園を描いた作品、室内を描いたアンティミスムの作品です。技術的には印象派に近く、日没間近や曇った日など微妙な光が好きなようです。

私としては、風景や室内の緑色の色合いがよかったので、嫌ではなかった。緑色の画家と呼びたい。結論としては、見にきて良かったなです。

ちなみに、ジェルブロワはアンリ・ル・シダネルが庭に薔薇園を作ったフランスの小さな村だそうです。

たまには、力が抜けた展覧会も悪くはありません。

「薔薇と光の画家 アンリ・ル・シダネル展 −フランス ジェルブロワの風−」は、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で2012年4月14日から7月1日まで開催です。

2012年5月6日日曜日

国立新美術館 大エルミタージュ美術館展

エルミタージュ美術館の収蔵品を使った展覧会が2012年4月25日から国立新美術館で開催されています。展覧会のタイトルは「国立新美術館開館5周年、大エルミタージュ美術館展、世紀の顔・西欧絵画の400年」です。連休中に時間を見つけて行ってみました。

エルミタージュ美術館は、ロシアのエカチュリーナ(昔はエカテリーナと言っていた)2世が1764年に作ったのが初めで、一般に公開されるようになったのは1863年以降です。現在3百万点の作品が収蔵されているといわれています。

今回の展覧会は、ヴェネチア・ルネサンスから20世紀まで年代順の展示で、第一章は「16世紀ルネサンス:人間の世紀」、第二章は「17世紀バロック:黄金の世紀」、第三章は「18世紀ロココと新古典派:革命の世紀」、第四章は「19世紀ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀」、第五章「20世紀マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀」となっています。

どうしても見たいお気に入りの作品があればそこに直行というのも良いと思いますが、今回の展覧会では、展覧会の趣旨でもあるように、西欧絵画の歴史を実感してみるのが、良いのではないでしょうか。実際に現物を見ながら歴史を感じるというのは、日本では国立西洋美術館の常設展くらいでしかできないのですから。

私の個人的なみどころは、

  • ティツィアーノ・ヴェチェリオ 《祝福するキリスト》
  • ロレンツォ・ロット 《エジプト逃避途上の休息と聖ユスティナ》
  • ドメニコ・ティントレット 《男の肖像》
  • バルトロメオ・スケドーニ 《聖家族と洗礼者ヨハネ》
  • ペーテル・パウル・ルーベンス 《ローマの慈愛》
  • アンソニー・ヴァン・ダイク 《エリザベスとフィラデルフィア・ウォートン姉妹の肖像》
  • レンブラント・ファン・レイン 《老婦人の肖像》
  • フロンソワ・ブーシェ 《クピド(絵画の寓意)》
  • ユベール・ロベール 《古代ローマの公衆浴場跡》
  • ウジェーヌ・ドラクロワ 《馬に鞍をおくアラブ人》
  • アンリ・ルソー 《赤い部屋(赤のハーモニー)》
印象派以降の作品は日本での展覧会でも見ることが多いので、どうしても興味は16世紀、17世紀になってしまいます。

大エルミタージュ美術館展の会期は、2012年7月16日までですから、機会があればもう一度見に行きたいと思っています。

2012年5月1日火曜日

ウクライナの至宝展 スキタイ黄金美術の煌めき

山梨県立博物館で、「ウクライナの至宝展 スキタイ黄金美術の煌めき」展が開催されています。ちょっと東京からは遠いのですが、東日本では山梨でしか開催しないということなので、美術のセミナーのメンバーといっしょに行ってきました。

この展覧会は、ウクライナ独立20周年記念にちなんで、ウクライナ国立歴史博物館とウクライナ歴史宝物館の収蔵品を展示するものです。展示品は、スキタイ文化からロシア正教関係の遺品まで長い歴史をカバーしていますが、展覧会のタイトルにあるように、スキタイがなんといっても目玉になっています。

スキタイは、紀元前8世紀から紀元前3世紀にかけて、黒海の北から東に向けて勢力を持っていた、遊牧騎馬民族です。スキタイ文化は、細かい金製品の加工技術、ギリシャ文明の影響、遊牧民族ならではの造形が合わさったものになっていて、今回の展示品もそのような特徴が現れたすばらしいものでした。

前4世紀のゴリュトス(弓矢入れ)はグリフォンや動物闘争文がスキタイらしい。
同じく前4世紀の《猪頭付き剣と鞘》の鞘には、猪の頭の飾りがついていて、全体は動物闘争文になっています。
スキタイを代表する名品といわれているのが、金の胸飾りですが、門外不出ということで、今回レプリカが展示されていました。レプリカでも、その模様の面白さ、精巧さには驚きます。

満足度の高い展覧会でした。山梨県立博物館での開催は5月7日までです。