2013年12月23日月曜日

実験工房展 戦後芸術を切り拓く 世田谷美術館

第二次世界大戦後、日本の美術界には戦争の空白を取り戻し再興しようとする様々な動きが発生します。敗戦翌年の1946年3月には、戦前の文展、帝展を受けつぐ日展が開催され、また在野の二科会などの公募展も再開されます。またこれらの画壇の動きに異を唱える日本美術会が出現し1947年に日本アンデパンダン展を開催され、1949年には読売新聞社が主催する日本アンデパンダン展(読売アンデパンダン展)も開催されます。1956年には世界の美術の動向を紹介する「世界・今日の美術展」が日本橋高島屋をかわきりに全国を巡回し、1957年にはアンフォルメルを唱道するミシェル・タピエが来日します。このような時代のなかで、造形芸術と音楽を合わせて展開した前衛芸術運動が、「実験工房」です。美術の分野からは、絵画では、北代省三、福島秀子、山口勝弘、写真では大辻清司、版画では駒井哲郎が実験工房のメンバーとなっています。音楽の分野のメンバーには、佐藤慶次郎、鈴木博義、園田高弘、武満徹、福島和夫、湯浅譲二がいました。

今回の世田谷美術館の「実験工房展」は日本で初めて公立美術館が「実験工房」だけに焦点をあてて企画した展覧会となっています。「実験工房」の代表作が展示されているばかりでなく、パンフレット、手紙などエフェメラの展示も充実しています。

抽象的空間表現を追求した北代省三、福島秀子、絵画や彫刻の枠を離れた視覚表現を目指した山口勝弘など、戦後という言葉を使う必要がない純粋な芸術となっていることに関心します。図録を精読し、このメンバーがこの後どのような活動したかをもう一度確認した後、再び観に行きたい展覧会でした。

「実験工房展」は世田谷美術館で2014年1月26日までの開催です。

2013年12月1日日曜日

江戸の狩野派 出光美術館

日本の美術史の中でも一番有名な流派が狩野派だと言われています。室町時代から江戸時代まで続く御用絵師です。狩野永徳の《洛中洛外図屏風》や《唐獅子図》など直ぐに思い浮かべることができます。でも、改めて江戸狩野といわれると、どれだけ分っているのかとちょっと心もとない。改めて日本美術史の本を見ると、驚くことに、江戸狩野にたいしてページを割いていない。狩野永徳に関して少し書いてあるだけです。

そんな状況の中で、改めて江戸の狩野派って何という疑問に答えてくれるのが、今、出光美術館で開催されている「江戸の狩野派 優美への革新」です。探幽、尚信、安信などが展示されています。

見所は、
  • 探幽《叭々鳥・小禽図屏風》の墨の技、余白の取り方の巧さ。
  • 探幽《鸕鷀草葺不合尊降誕図》の構図のおもしろさ。
  • 探幽《源氏物語 賢木・澪標図屏風》の大和絵への接近。
  • 探幽《 白鷴図》。写生は応挙だけでない。
  • 尚信、安信がこんな絵を描いていたのかというのもわかります。
  • 展示最後の、京狩野と江戸狩野の対比も、なるほどという感じです。
「江戸の狩野派」は出光美術館で2013年12月15日までです。