2013年9月29日日曜日

清雅なる情景 日本中世の水墨画 根津美術館

根津美術館はいつも良い展覧会を開催していますが、今回の「清雅なる情景 日本中世の水墨画」も楽しめます。

気になった作品は、

  • 滝が目をひく、芸阿弥筆《観瀑図》一幅、室町時代 1480。芸阿弥は将軍家に仕える同朋衆、能阿弥の子、相阿弥の父
  • 観音菩薩が随分くつろいだ姿をしている、赤脚子筆《白衣観音図》一幅、室町時代 15世紀。白衣観音は三十三観音の一つ。赤脚子は東福寺画系の絵師、中国唐代以降の禅宗教団のなかで生まれた図像で、観音が波が打ち寄せる岩の上でくつろぐ姿を描く
  • 中国元代の因陀羅筆の《布袋蔣摩訶問答図》一幅、元時代 14世紀。人の顔がおもしろい
  • 墨の濃いところと薄いところの対比が美しい、高先景照題詩の《山水図》一幅、室町時代 15世紀。
水墨画に関心があればぜひ観ておきたい展覧会です。2013年10月20日まで、根津美術館。

2013年9月21日土曜日

六本木クロッシング2013 アウト・オブ・ダウト展 森美術館

いつも、美術館にいく皆さんと、経始まる「六本木クロッシング2013 アウト・オブ・ダウト展」へ。

3年毎に行われる六本木クロッシング、今年はオーストラリアとアメリカのキュレーターを含めて作品を選び、社会的問題意識も持って現代アートの「いま」と問いかける企画になっているようです。「疑い」は「疑いもなく」に変わるでしょうか。

展示は、前半はアートが造形にとどまらず、社会につながる意味や象徴と強く繋がり、様々な問いかけをする作品。後半は、アートという表現手段を追求した作品が多かったように感じました。

私が面白いと思ったのは、

  • 小林史子の椅子を積み上げたインスタレーション。座るという機能を持たなくなった椅子が、様々な記憶の残滓として巨大な壁になっているような作品。


  • 金氏徹平の様々なイメージが仮想的な奥行きを持ち集積した作品。
  • サイモン・フジワラの、ほんものの岩や、岩的なものに、宗教的な想いを馳せる作品。
社会的な問題意識やメッセージと関わりをもっている、繋がっていると示すだけでは、それをアートで行う必要が無い。アートであるがゆえに表現できる物は何かと、考えさせられる展覧会でした。

六本木、森美術館で、2014年1月13日まで。



2013年9月13日金曜日

システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展 天才の軌跡 国立西洋美術館

日本で西欧のオールド・マスターの展覧会が開催されると聞くと、どんな作品がくるのか気になります、本当に観るべき作品が来るのだろうかと。特に、ミケランジェロともなれば、大きなフレスコの作品や彫刻作品が、日本で観られるなど考えられません。

今回の展覧会も第一級の作品を期待せず、日本でミケランジェロという名前をつけどのような展覧会が可能なのかと興味をもって観ると楽しめる展覧会になっているのではないでしょうか。ミケランジェロの子孫が引継ぐ、フィレンツェのカーサ・ブオナローティのコレクションの中から、ミケランジェロ15歳のときのレリーフ《階段の聖母》、死の前の年の木彫《キリストの磔刑》、フレスコ画を描くための習作素描、自筆手紙などが展示されています。

国立西洋美術館の、「システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展 天才の軌跡」は2013年9月6日から11月17日までです。


2013年9月1日日曜日

米田知子 暗なきところで逢えれば 東京都写真美術館

もしかしたら、何でもない、風景や建物の写真。
でも、それにちょっとした説明が与えられると、それは人の記憶の記録に変容してしまう。
そんな写真が並んでいるのが、米田知子の「暗なきところで逢えれば」展です。

写真についている説明は・・・・・・

  • 「サハリン島」より「帝政ロシア時代、囚人が掘ったトンネルの入口、”3人兄弟の岩”をながめて」
  • 「Japanese House」より「日本統治時代に設立された台湾銀行の寮、後の中華民国中央銀行職員の家」
  • 「積雲」より「平和記念日・広島」
  • 「積雲」より「避難した村・飯館村・福島」
  • 「Scene」より「 野球場-終戦直前まで続けられた特攻出撃の基地の跡/知覧 」
  • 「見えるものと見えないもののあいだ」より「安部公房の眼鏡ー『箱男』の原稿を見る」
  • 韓国国軍機務司令部だった建物「Kimusa」
  • 「パラレル・ライフ:ゾルゲを中心とする国際諜報団密会場所」より「小石川植物園」
写真自体と、それに付けられた説明と、観る人の想いが重なったときに、作品が現われてきます。

森美術館の「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」のアーティストトークで、米田知子さんが話された内容が、森美術館の公式BLOGに掲載されていますので、そちらも参照してみてください。
http://moriartmuseum.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-d030.html

「米田知子 暗なきところで逢えれば」展は、東京都写真美術館で、2013年9月23日までです。