2013年2月17日日曜日

ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー二人の写真家 横浜美術館

もともとロバート・キャパという人物がいなかったとは知りませんでした。ロバート・キャパは、ハンガリー生まれのアンドレ・フリードマンと、シュトットガルト出身のユダヤ系ポーランド人ゲルダ・タローが作り出した架空の人物です。二人とも戦場で作品を作り続けた戦場カメラマンです。もちろん架空のロバート・キャパが撮った写真も戦場写真でした。ゲルダ・タローがスペイン戦争の従軍で26歳で若く死んでしまうと、アンドレ・フリードマンが一人でキャパの役を担うことになったという訳です。

今回の展覧会は、ロバート・キャパ誕生に重要な役を果たしたゲルダ・タローの写真が最初に展示されています。これは2007年にニューヨーク、ロンドンなどを巡回した展覧会を日本にもってきたものです。後半は、ロバート・キャパ(つまりアンドレ・フリードマン)の展示で、横浜美術館所蔵の全作品を展示するものです。どちらも、メインのテーマは戦場写真です。

初期のゲルダ・タローの写真は、構成が明確で、写っている人々、例えば人民戦線軍の女性兵士なども自信に満ちあふれていて、危機的な状況にあるというよりも、目的達成に向けて、ある意味楽しそうです。つまり、プロパガンダ的な写真になっています。よくできた写真だとは思いますが、それで良いのかという気もします。その後は、スペインでの共和国側の戦況も悪くなり、戦死者の写真も多くなります。でも80年の歴史が、写真からメッセージを抜き去り、今ではただのBODYの写真だと思えてしまうのは、私だけでしょうか。

ロバート・キャパ(つまりアンドレ・フリードマンの方)は、スペイン戦争、中国戦線、ノルマンディーからフランス解放、インドシナの独立戦争と、こちらもずっと戦場写真です。キャパの写真からは、単純に敵と味方で割り切れない、複雑な思いを持ちながらも、写真というメディアがもっているパワーを強く感じました。その場にいないと見えてこない記録媒体としての性格、良いにつけ問題があるにつけそこにある強いメッセージ、強い造形的構成力。ありきたりな言葉で申し訳ないのですが、そこには人がいるということだと思います。

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー二人の写真家」展は、横浜美術館で2013年3月24日までです。

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