あまり期待しないで観に行ったところ、素晴らしく良かったという展覧会があります。「ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 印象派を超えて点描の画家たち」は、まさにそんな展覧会でした。なにしろ展覧会の名前が長い、しかも「ゴッホと色彩の旅へ」とのサブタイトルまでついています。これってどんな展覧会?という感じです。
その内容は、オランダのオッテルローにあるヘレーネ・クレラー=ミュラー氏のコレクションを展示するクレラー=ミュラー美術館の作品を日本にもってきたものです。図録のテキストで長尾光枝氏は、「本展覧会は、ジョルジュ・スーラが開拓し、その盟友であるポール・シニャックが普及させた「分割主義(Divisionism)」という理念とその実践に着目することにより、モダンアートを特徴づけるひとつの類型を掘り出そうという試みである」と書いています。最初からそう言ってくれれば分かりやすかったのにと思います。
点描と良く言われますが、点であることに注目せずに、色を独立させ分割し網膜上で視覚混合させることに意味があると捉えると、「分割主義」になるということです。そう考えると、スーラやシニャックの「分割主義」の成果はゴッホにつながり、さらにそれをモンドリアンが深化させ、ついにモンドリアンの幾何学的抽象にまでつながっていきます。
この展覧会では、様々な「分割主義」の作家を観ることができます。スーラやシニャックはもちろん、アンリ=エドモン・クロス、マクシミリアン・リュス、モーリス・ドニの作品があります。ゴッホも「分割主義」の視点で観ることができます。私が気に入ったのはゴッホの《じゃがいものある静物》。ベルギーとオランダの「分割主義」者、テオ・ファン・レイセルベルヘ、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド、ヤン・トーロップなどフランスの「分割主義」に比べ精神主義的、象徴主義的な作品にも惹かれる所があります。
モンドリアンも、1903年のまだ具象的な《ヘイン河畔の樹》、「分割主義」らしい1909年の《砂丘》、普遍的な美を目指した1913年の《コンポジションNo.11》、成熟期のモンドリアンらしい1927年の《赤と黄と青のあるコンポジション》などが展示されています。《コンポジションNo.11》の前ではずっと長く立ち止まって観てしまいました。
たいへん楽しめる展覧会でした。「ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 印象派を超えて点描の画家たち」は国立新美術館で、2013年12月23日までです。展覧会タイトルに惑わされずに観に行ってはどうでしょうか。
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