2012年3月4日日曜日

「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展

靉嘔に関しては、だいぶ前に、東京国立近代美術館所蔵で作品を見て衝撃を受けたのを覚えています。たぶん《アダムとイヴ》だったと思うのですが、人物を虹色のスペクトルで塗り分けた作品で、日本にもこのように色彩でコンセプトを表現することにこだわった人がいたんだと感心しました。

昨日3月3日に、東京都現代美術館の「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展の、学芸員の方によるギャラリーツアーに参加させてもらい、靉嘔の全貌が見えてきました。

靉嘔は1931年の生まれですから、現在80才です。
靉嘔とは変なペンネーム(雅号?)ですが、これは仲間内で「あいうえお」の中で好きなのはどれかと聞き、「あ」「い」「お」を選んだということだそうで、面白いですね。

靉嘔の活躍は、1950年代、当時の日本の美術としては突出して明るい、オプティミスティックな表現で、大きな作品を作り始めた所から始まります。今回の展示品では《田園》がその代表作になります。
1958年にアメリカに渡ると、そこでは絵画平面にとらわれない、環境作品を作り始め、オノ・ヨーコらのフルクサスとの交流も持ちます。その後、虹色のスペクトラムを使った作品をたくさんつくるようになります。

私が今回の「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展で興味を持った点は、

  • 靉嘔がレジェ的な一種オプティミスティックな絵画からスタートし、環境芸術、ハプニングなど1950年代から1960年代の最先端の動向に呼応していったその歴史。
  • その後、線・形を超えて、虹の色で表現するまさにユニークなスタイルを獲得し、それで様々な作品が作られたこと。
  • 伝統から離れた作品を作っているように見ながら、般若心教を写した作品や、中国の漢詩を写した作品があり、日本・東洋文化に対する関心もあったことがわかる点。
  • 芸術の普及を考え、版画作品にも力を入れられていて、版画作品も多く展示されていること。
  • そして、今回の展覧会のためにあらたに作った大きな作品があり、まだまだ活躍をされているのだと判った点。ちなみに、靉嘔さんは日曜日には会場に来られて、ハプニングをされたりしているそうです。
「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展は、2012年2月4日から5月6日までの開催です。200点を超える作品が展示されていますから、見に行かれる方は、ゆっくり時間をとって行くと良いでしょう。靉嘔さんは、毎週日曜日午後1時から2時間くらい、会場内で作品のオブジェクトを並べ替えるというパフォーマンスをされているということですから、その時に行くのが良いかもしれませんね。

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