2011年12月17日土曜日

アルベルティの絵画論を読む

レオン・バッティスタ・アルベルティの『絵画論』、三輪福松訳、中央公論美術出版、[改訂新版]、平成23年10月10日発行、を読んでみました。
『絵画論』は1436年に書かれています。中世の絵画が新しい絵画に変わるちょうど転換期に書かれた絵画論と言えるでしょう。

本の内容の話に入る前に、アルベルティはどんな人であったかを確認してみます。アルベルティは1404年イタリアのジェノバの生まれ。フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂のファサードの設計で有名です。ルネサンス期の人らしい万能人で、人文主義者で、数学、哲学、古典学にも通じています。同時代のブルネレスキ、ドナテッロ、マザッチョと親交があり、この『絵画論』はブルネレスキに宛てられました。1472年にローマで生涯を閉じています。

『絵画論』は日本語の翻訳本で70ページ程の長さで、それほど長大なものではありません。これが3巻に分かれています。(3巻とありますが、現代の感覚でいうと3章という感じです)。

第1巻は、幾何学的な話から始まっています。点、線、面と話は展開していきます。そしてそれらを人間が認識できるのは光のためだという話になります。つまり人間は光を通して物体を見るということを言っています。そして、対象の面とそれを見る目を線でつなぐと、目が頂点になるピラミッド型ができるということになります。このように論理を展開し、遠くのものはどのように見えるか、近くのものはどのように見えるか、と続いていきます。当然この話は遠近法の話になっていきます。この辺の議論は、図や、数式を使わずに、言葉で述べられているので、理解するのがなかなか大変です。

第2巻では、絵画の力を説き、「絵の力で、他では見られないほど貴重で、豊かでその上美しいものを理解する事ができる」と言っています。また「(絵は)ささいな装飾ではない」とも言っています。
次に、絵画の要素の話になり「絵画は、輪郭、構図、採光の3つの要素で構成される」と書かれています。輪郭に関して、描かれる対象物と目の間に裁断面となるヴェールを置くようにし、対象物と目の間の視覚ピラミッドがヴェールを横切る線を結ぶと輪郭になる。構図に関して、構図とは対象の諸部分が一緒になって示される仕方のことで、小さな面が構成されて肢体になり、肢体がつながりが人体になり、主題を表現するために様々な人物の人体をうまく適切な場所に置いて絵画全体にする、これが構図でありこの調和が大事である。アルベルティはこの構図の話をするとき、歴史画を描く事を思い描いています。3番目の要素の採光に関して、重要なのは白と黒で表される明度であり、それに染料加えていく。

第3巻では、画家について語っています。画家が良い作品を作るためには、立派な人間であり、学問に通じ、善良である事が必要であり、詩人や雄弁家と交わるのが良い。さらに、画家が芸術に通暁するためには、事物を良く見て自然から学ばなければいけないと言います。
そして画家が後世に残る作品を残すためには、下絵を作る所から良く構想し、完璧さを求めて、途中で投げ出さずに完成させなくてはいけないと言っています。

というわけで、アカデミックな西洋絵画とはこういうものだと、我々が思っているものの原型がここにあります。画家像のほうはかなり真面目な常識人であるようですね。





1 件のコメント:

  1. 文章がおかしいところがちょっとありますが、参考にさせていただきます。書き言葉か話し言葉か統一しましょう

    返信削除