国立西洋美術館で行われている「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」をやっと見に行きました。展覧会は2011年10月22日から2012年1月29日までの開催です。
これは、王道の企画展です。誰でも知っている《着衣のマハ》を含むゴヤの作品をプラド美術館から借りてきて、それに国立西洋美術館が所蔵しているゴヤの版画作品を合わせて展示するというものです。
国立西洋美術館も大勢の観客が来るのを想定している様子で、入り口もいつもの建物の中に入って右にまがり階下に降りるルートではなく、建物の外を廻って階下に降りるルートになっていました。また作品も、割に小さな素描とか版画作品が多いのですが、かなり高い位置に、床から165cmくらいの所に展示し、混んでも後ろから見られるようになっていました。
幸いなことに、今日はクリスマス連休の日曜日のせいか会場はそれほど混んでなく、ゆっくり見ることができて満足しました。
ゴヤは1746年生まれ1828年没ですから、社会が大きく動く時代に生きていた人です。
ちょうど産業革命の時代です。フランス革命が1789年。スペインの海軍がトラファルガーの海戦で負けるのが1805年。ナポレオンのスペイン戦役が1808年。宮廷画家であったゴヤはいろいろなものを見ずにはいられなかったわけです。ゴヤは1792年に聴力を失っていますから、嫌なことは聞かなくてすんだわけですが・・・。
今回の展示も大きく分ければ、王族の肖像画、宮殿のタペストリーの下絵、大臣の要請でマハを描いている光の時代の作品と、腐敗した聖職者や戦争を見て人の愚かさに絶望した影の時代の作品に分かれます。鑑賞する人も快活な楽しさと重苦しさとを両方体験しなくてはいけないようになっています。
通して見て、すばらしいなと思うのは、ゴヤの人間観察者としての目ですね。スペイン女性のマハの挑発的なポーズ、戦争や愚かなことをしている人の表情や動作、悪夢の中のように空中に浮かんでいる人の不安定な形、それぞれ見事な形をしています。そして物理的な形体の中にある、快感であったり、怒りであったり、諦めであったりする、感情の動き。
もちろん《着衣のマハ》にも改めて魅せられました。
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