2012年1月14日土曜日

フェルメールからのラブレター展

人の真実は日常のさりげない中にあると思うのなら、17世紀のオランダ絵画を見に行かなければいけません。とくにその中でもフェルメールです。そこには、神話もなく、宗教的高揚もなく、大事件もなく、嵐もなく、狂気もありません。とくにフェルメールでは、乱痴気騒ぎも、声高な教訓もありません。

今、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「フェルメールからのラブレター展」を見にいきました。
この展覧会は、3点のフェルメール作品を中心に、人と人をつなぐコミュニケーションというテーマを持って17世紀オランダ絵画を集めたものになっています。フェルメールの作品はワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵の1665年に描かれた《手紙を書く女》、アムステルダム国立美術館所蔵の1663-4年に描かれた《手紙を読む青衣の女》、アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵の1670年に描かれた《手紙を書く女と召使い》です。
フェルメールの他にも、ヤン・ステーンの教師と子供の作品、ピーテル・デ・ホーホの室内で会話する人の作品など、20人を超える画家の作品が展示されています。

フェルメールのコーナーでは、最初に《手紙を書く女》があります。手紙を書きかけの女性がこちらを向いている図です。黄色い服の色と、そこにあたる光が、何とも良い感じです。
次は《手紙を読む青衣の女》です。青い服を着た女性が横を向いて手紙を読んでいる図です。この作品はちょうど修復を終わった後で、色もだいぶ復元されたようです。色の微妙な色合いがたいへん素晴らしいです。
最後に《手紙を書く女と召使い》です。これは左側に窓があり部屋全体があかりに包まれています。女性がこちらに向いて手紙を書いていて、その近くに窓の外を向いて召使いが立っています。でもこれは、なんかリアリティが無い、精妙さが足りないと感じました。このなぞの理由は後になってわかります。

この展覧会は、《手紙を読む青衣の女》の修復がどう行われどう変わったかという展示があったり、当時の手紙は封筒に入れなかったとか、手紙の文例集があったとか、手紙に関するちょっとしたパネルがあったり、絵以外にもなかなか楽しめます。

展覧会に行くと、図録を買おうか買うまいかいつも悩むのですが、この展覧会の図録は買ってしまいました。この図録の中には、「フェルメールの時代の人々の絆」「17世紀のオランダ文学にみる正しい暮らし方の伝達法」「”デルフトのフェニックス”、または名声のゆくえ」「「文遣い」から「文書く女」へ 遠くを近きにする術一個の快楽の在り方」など面白そうな小論が並んでいたからです。読むのが楽しみです。

フェルメールの実物が3点もあり、17世紀らしいオランダの絵画が見られる、お薦めの展覧会です。金曜日の夜に行ったのですが、比較的すいていて、絵の近くでじっくり見ることができてたいへん満足しました。2012年3月14日まで開催されています。

帰ってきてから、以前買った、『フェルメール論』小林頼子著、八坂書房、2008、を読み返してみました。すると、何か変だと感じた《手紙を書く女と召使い》は、様式として完成されたが、繊細な処理は放棄され、単純化され、誇張された時期の作品であると書かれていました。そうだったのかと納得しました。


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