1920年代から第二次世界大戦にかけて、池袋近辺の長崎などに、貸し住居付きアトリエができ、そこに若い芸術家達が集まってきました。そこを詩人の小熊秀雄が「池袋モンパルナス」と名前をつけました。この展覧会は、その当時の資料を展示し、また関係する作家の作品を集めたものになっています。
今回紹介されている作家は、小熊秀雄、寺田政明、吉井忠、長谷川利行、麻生三郎、靉光、松本竣介、丸木位里、丸木俊などです。
- 小熊秀雄、1901-1940、詩人・小説家、SFマンガの先駆となる『火星探検』の原作を作成
- 寺田政明、1912-1989、寺田農の父、日本のシュールリアリズム画家の一人
- 吉井忠、1908-1999、戦後は美術評論、児童書の挿絵等の活動も行う
- 長谷川利行、1891-1940、アウトロー的な生涯を送り、存命中は評価されなかった
- 麻生三郎、1913-2000、戦後、自由美術家協会に参加、武蔵野美術大学で教鞭をとる
- 靉光、1907-1946、異端の画家といわれたが、死後評価を高めた
- 松本竣介、1912-1948、絵画表現ではグロッスの影響を受ける、都市風景を描く
- 丸木位里・俊、それぞれ、1901-1995、1912-2000、原爆の図の制作で知られる
会場の中は、絵画作品の展示だけでなく、池袋周辺の当時の地図、吉井忠の日記のパネル、3畳一間に押入とトイレがついた住居の実物大間取りが、展示されています。また、当時のことを振り返ったビデオがながれていて、小熊秀雄が詞を書いた「池袋モンパルナス」の歌が流れています。
この展覧会では、当時の貧しい若い芸術家達が、狭い家に住み、海外のシュールリアリズムなどの動向を注視し、お互いに切瑳琢磨し、政治的な圧力を受け、戦争に巻き込まれながら、頑張っていたことが良くわかります。
それでは展示されている作品に感銘を受けたかというと、私にはちょっと微妙でした。リズム感の無いいかにも昭和初期の歌である「池袋モンパルナス」の歌がずっと流れているのを聞きながら、濃い緑色の壁にかかった、茶系を中心にした、昭和のカラー・パレットで描かれている作品を見て、どうも感情移入できないというのが正直な感想でした。
池袋モンパルナスという切り口はそれはそれで面白いと思いますが、それぞれの作家を丁寧に見ないといけないなというのが今の感想です。
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