左の写真の、人気のない寂しいカフェはどこのカフェでしょうか。そうです、国立新美術館の2Fのカフェです。夜6時半くらいです。
金曜日の夜は、美術館も8時まで開いている所が多く、良い時間を過ごせることが多いのですが、少し人気のない展覧会だと、美術館独り占め状態になり、贅沢なような、寂しいような、気分を味わうことになります。
今日、国立新美術館で開催されている、「野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿」展も、そんな感じでした。独り占めではありませんでしたが、観客よりも監視員さんのほうが何倍か多いような状況でした。良い展覧会なのに残念、皆さん来てください。
野田裕示(のだひろじ)さんは1952年和歌山県生まれ、多摩美術大学を卒業し、80年代より活躍されている抽象絵画の作家です。今回の展覧会は、3章から成っていて、1)1980年代 絵画の可能性への試み、2)1990年代 独自の様式の確立と展開、3)2000年代 さらなる可能性を求めて、という年代順の構成です。また、2カ所に彫刻家の岡本敦生さんとのコラボレーション作品が置かれています。
1980年代は、薄い木箱の中にカンバスをまるめたまま置いた作品や、木枠をカンバスで包み込んだ上に描いた作品等、単に平面のカンバスに絵を描かないぞという作品。
1990年代は、平面上にカンバスを重ねてカンバスを折り曲げて使ったり、カンバスを縫い合わせたりした上に、描いた作品。
2000年代は、カンバスに細工をするよりも、こころに浮かんだ形状を絵にしたような作品。
こう書いていくと、理念先行のようですが、実際の作品を見ると、1980年代、90年代の作品では、カンバスの縫い目の感触、重ねられた色が作る微妙な色彩、筆のあと、絵具が流れた跡、色が擦れたような跡など、手作業の工程を感じさせるような要素が多く、絵としての実体がそこにあることを強く感じます。絵のまえに長い時間立って絵と対話を続けたくなるような作品です。
2000年代の作品は、自由に心に浮かぶ不定形な形状を描いたような作品、日本の障壁画のように真ん中に空白を大きくとり大きな筆跡を残したような作品と、新たな展開を示しています。私はその色の出し方や、色の対比のさせかたが、気に入りました。
作品は、全部で140点もあるので、最後の方は「後15分です」のアナウンスで、慌てて見なければいけなかったのが残念です。
野田裕示さんの作品は、パンフレットやポスターを見ただけで、ああ、こういう作品なんだ決めてしまわず、ぜひ本物を見てもらいたいと思います。
「野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿」は国立新美術館で2012年4月2日までの開催です。