今日は二度目なので、順路を無視して、最初にポロックが作品を作っているフィルムを見に行きました。なるほど、最盛期の描き方は、絵具を撒き散らすドリッピングというよりも絵具を垂らすポーリングですね。床に置いた絵の周りを廻り、休み無く筆を動かす様子からは、後にこれがアクション・ペインティングと呼ばれたのも良くわかります。
次に、今回の目玉と言われる、テヘラン現代美術館の《インディアンレッドの地の壁画》へ。この作品は今回の展覧会の中では大きく、183cm × 243.5cmの大きさですが、ポロックのベストの作品の大きさからすると、小さめですね。例えば、MOMAにあある《One:Number31》だと、269.5cm x 530.8cm もあります。それでも、絵の中心が無いオールオーバーである事や、地と図の関係を無くしたり、絵具の塗り重ねで表現する等、ポロック最盛期の特徴は十分に判ります。
ここで、改めて、会場の入り口の方に戻り、最初の方から見て行きます、この展覧会は年代順に展示されているので、ポロックの年に沿った作品の展開が良くわかります。
西海岸から出てきて、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグで学び、アメリカ地方主義、インディアンの伝統、メキシコの壁画などから影響を受け、試行錯誤をした時代が1941年くらいまで続きます。そこから何がきっかけか、シュールリアリズムの自動筆記的なものや、地と図に関する研究を行い、アメリカの現代作家としてもてはやされる時代になります。これが30代。そこから大きく飛躍し36才から38才くらいが、いわゆるポロックらしい全盛期の作品になります。《インディアンレッドの地の壁画》もこの時代の作品です。しかし、最盛期でありながら、ポーリングした後に銀の絵具を塗ったり、画面を大きく切り取ったり、ここで止まらないという意志が見える作品も出てきます。そこから39才以降は、ブラック・ポーリングなど迷いの時代に入って行き、42才くらいになると行き詰まり作品を作れなくなります。最後は44才に自動車事故で亡くなります。
今回の展覧会は、ポロックの、成長、さまざまな試行、最盛期、迷い、停滞の、生涯が良くわかる構成になっています。
最後に出口の所にある、アトリエの再現で、写真を一枚。上の写真です。
この展覧会では、その後世界のアートシーンがどうなったのかまでは示されていませんが、ポロックの後どうなったのか、学習してみたいテーマです。オールオーバーを追求してカラーフィールド・ペインティングに行く方向、抽象から転換してポップ・アートに行く方向。いずれにしろポロックが行き着くとこまで行ってくれたおかげで現代アートは次に展開して行く事になります。
(追伸) 東京国立近代美術館開館60周年記念手帳を入手できました。しかも表紙はポロック。嬉しいですね。
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