2011年11月24日木曜日

ジャン・ボードリヤール 『芸術の陰謀』

1996年5月20日にフランスの『リベラシオン』にジャン・ボードリヤールが書いた評論「芸術の陰謀」が日本語に翻訳され、2011年10月にNTT出版から他のインタビュー記事などとともに『芸術の陰謀』として出版されました。
15年の年月を超えてこの評論のインパクトがあるということでしょうか。

『芸術の陰謀』の話に入る前に、関連の話を少しだけ収集してみましたので、紹介します。
ジャン・ボードリヤールは、1981年に『シュミレーションとシュミラーくる』を出版し、現代はすべてがコピーの時代であると言いました。
ここからシュミレーショニズムというアートのムーブメントが発生してきます。《マイケルジャクソンとバブルス》像で有名なジェフ・クーンズや、自ら仮装して写真を撮ることで有名なシンディー・シャーマンなどが、シュミレーショニズムのアーチストと言われています。
日本では椹木野衣さんは、1991年に『シミュレーショニズム ハウス・ミュージックと盗用芸術』を書いて、美術評論家としての活動を始めました。

このように、アート・シーンに影響を与えたボードリヤールですが、『芸術の陰謀』では、現代アートは、ハイパーリアルになったクールで透明でコマーシャル・メディア的な世界で、無価値・無内容になったと言っています。そして無価値・無意味なものを取引するインサイダー取引がはびこることになったとも言っています。当時、業界の人は、この無価値・無意味に反応したのか、大いに反発したようです。
そういう本が、今の日本で翻訳されて出てきたわけです。

この議論に中には、アート作品の価値とは何か、それにどう値段がつくのか、本物とコピーの区分けに意味あるのかなど、今の時代だからこそ考えてみたい重要なテーマが含まれているように思われますね。

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