東京都美術館で、テート美術館の収蔵品を中心にした「ターナー展」が開催されています。
ターナーというと嵐の海景の作品を思い浮かべるかもしれませんが、この展覧会を観ると、ターナーは18世紀から19世紀前半の絵画へのニーズをくんで様々な作品を制作していることがわかります。若い頃の、各地の景観を描く地誌的風景画、クロード・ロランのような17世紀フランスの風景画家にならった歴史的風景画、イギリス貴族のグランド・ツアー的視点で描かれたイタリア古代の建造物などを描いた絵、崇高さを表現しようとするロマン的なテーマの絵。
気に入ったのは、絵の受容者の好みや意図に気をつかった大きな油絵の絵より、水彩・グワッシュでターナーが風景表現の可能性を追求した絵でした。
反対に、むりに(私はむりにと感じてしまいましたが)歴史的風景画にしようとして人物を書き込んだ絵はあまり感心できなかったというのが正直な所です。また、《平和ー水葬》など劇的な場面を描いた、絵画的・造型的追求というよりもロマン主義的主題にウェイトがある作品にもちょっとついていけないものを感じてしまいました。
ゴンブリッチは『美術の物語』のなかで、「伝統の解体後、画家に残された可能性は二つ、ターナーの道を行くかコンスタブルの道を行くかのどちらかであった。絵を書く詩人となり、感動的で劇的な効果をねらうか、それとも眼の前のモティーフにこだわり、正直に必要に自然の追求をつづけるか」と書いていますが、私はコンスタブルに1票でしょうか。
そうは言っても、この展覧会は一度見に行く価値があります。東京都美術館で「ターナー展」は2013年12月18日までの開催です。
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