2013年5月20日月曜日

アントニオ・ロペス展 BUNKAMURAザ・ミュージアム

5月の第2週に、ウィーンで美術館巡りをしていたために、このブログへの投稿も少し休みになってしまっていました。ウィーンでの話はまたどこかで整理したいと思いますが、今日は、BUNKAMURAザ・ミュージアムで行われている、アントニオ・ロペス展の話をしたいと思います。

アントニオ・ロペスは1936年生まれのスペインのリアリズム絵画の作家です。第2次世界大戦後スペイン、特にマドリッドの絵画は、世界のメインストリームとは別発展をしていました。ガラパゴス的進化をしたとも言えるでしょう。リアリズムとはいってもフォトリアリズムのようなリアリズムではなく、具象を通じてものの存在に迫るといったリアリズムです。

とにかく、今の常識からかけはなれています。例えば、93.5cm X 90.5cm、油彩の《グラン・ピア》では、人のまだいない朝の街角の様子を7年かけて描いています。また、244cm X 122cm、鉛筆の《バスルーム》は、本当にバスルームを3年かけて描いています。デュシャンのように便器を作品だとするのも衝撃的ですが、便器のあるバスルームを3年もかけて描くのはもっと衝撃的ではありませんか。等身大の男性裸体のブロンズ像を立たせずに横たえて展示している作品もあります。これには本当にびっくりしてしまいました。

現代のアートとは何かを考えるためにも、一見の価値はあるのではないでしょうか。

アントニオ・ロペス展は、BUNKAMURAザ・ミュージアムで2013年6月16日まで開催です。

2013年5月5日日曜日

国宝燕子花図屏風 <琳派>の競演 根津美術館

いつもの尾形光琳の《燕子花図屏風》です。今回も琳派作品と共に展示されています。

《燕子花図屏風》以外には、俵屋宗達工房作品とみられる「伊号」の印が押された《四季草花図屏風》、宗達工房をひきついだ喜多川相説の《四季草花図屏風》、野々村仁清の豪華な壺《色絵山寺図茶壺》、本阿弥光悦の色紙、尾形光琳の《白楽天屏風》、酒井抱一の《七夕図》などが見られます。

《燕子花図屏風》を観ながら、少ない色と同じモチーフで、なぜこの絵は成立しているのだろうかと考えたり、宗達工房の《四季草花図屏風》を観ながら、この屏風はどのように使われたのか考えたりしていると、連休らしいのんびりした時間を過ごせます。

「国宝燕子花図屏風 <琳派>の競演」は2013年4月20日から5月19日です。

2013年4月28日日曜日

チム↑ポム「PAVILION」 岡本太郎記念館

2011年5月に渋谷にある岡本太郎の壁画《明日の神話》を、福島第一原発の事故を表すパネルで拡張してみせ、物議をかもしたのがチム↑ポムという集団でした。岡本太郎記念館の平野暁臣は、そのチム↑ポムを認めて、今回、岡本太郎記念館でのチム↑ポム「PAVILION」展開催の運びになったわけです。

チン↑ポムの作品は2階に展示されていて、2つの部屋とそれを繋ぐ廊下が展示場になっています。

最初の部屋には4つの作品から構成されています。一番目をひくのは、無人の福島、岡本太郎の太陽、渋谷を、チム↑ポムに導かれてカラスの群れが飛ぶビデオ作品。そのスクリーンの左側には岡本太郎の墓を見つめる女性の映像。スクリーンの右にはゴミを墓地に埋め黒いゴミ袋を墓石のようにするビデオ作品と、それに呼応する石で創られたゴミ袋。スクリーンの反対側には、岡本太郎が恐山などで撮った写真を、チン↑ポムが焼いた木の上に焼き付けた作品。

最初の部屋から、岡本太郎が書いた「殺すな」というパネルの前を通って、次の部屋に進むと、そこは光が入らない空っぽのホワイト・キューブの部屋。壁に穿かれた明るい部分を覗くとそこにはプラスチックの治具に支えられて宙に浮いている岡本太郎の骨が一片。

ここにあるのは、メッセージ性の強い作品ですが、単純に言葉を造形作品に置き換えただけのアジテーションではありません。こういう形でしか表現できないものがあるという作者の思いが強く感じられます。

展覧会は、青山の岡本太郎記念館で、2013年3月30日から7月28日までです。

2013年4月24日水曜日

貴婦人と一角獣展 国立新美術館

今、15世紀から16世紀にかけては、ルネサンスの最盛期ですが、ゴシックが最後の光を放つ時代であり、リーメンシュナイダーの彫刻などすばらしい作品も制作されていました。実はそのころは、タピスリーの最盛期でもありました。今回、フランス国立クリュニー中世美術館から来ているのは、そんな時代の最上級の6枚のタピスリー《貴婦人と一角獣》で、《触覚》《味覚》《臭覚》《聴覚》《視覚》《我が唯一の望み》です。

国立新美術館の展示は、大きな半円形の部屋を作り、その壁面にこの6枚のタピスリーだけが掛けられています。その部屋の周りには小部屋があり、そこには、このタピスリーの動物、植物、服装、紋章の図像研究の展示があり、一角獣のキリスト教的意味や宮廷での意味が論じられています。つまり、全ての展示がこの6枚の絵に向いています。

ここには、ルネサンスが追求したような、三次元的な空間の描写、自然の再現、理想的な人体表現などはありませんが。赤い色と緑色の対比の心地よさ、植物であふれた画面の豊穣さ、可愛い小動物達、美人というよりも個性的な顔立ちの貴婦人と召使い達、一角獣がもつ象徴的な意味を思いめぐらす楽しみなどがあります。

西洋中世の作品を日本で観る機会はかなり少ないので、今回はたいへん良い機会だと思います。お薦めの展覧会です。開催期間は2013年4月24日(今日です)から7月15日です。

2013年4月22日月曜日

熱々東南アジアの現代美術 横浜美術館


2013年4月13日から6月16日まで、横浜美術館で「熱々東南アジアの現代美術」が開催されています。

横浜美術館が主催、シンガポール美術館が共催の形で、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの8ヶ国から25人の作家の作品が出展されています。

この展覧会から感じるのは、東南アジアの現代作家の社会への問題意識です。国境、民族、都市化、グローバル化、独立に関わる痛み、地域社会の閉塞感などの課題を形にして見えるようにしたい、そんな意図を強く感じます。

ここに載せた写真は、シンガポールのリー・ウェンの《世界標準社会(World Class Society)》という作品の一部になっているアンケートに解答した結果入手した「World Class Society」バッチです。

日本でも、会田誠や、Chim↑Pomなど、社会に対する関心をテーマにするアーチストが注目を浴びるようになっているように思いますが、それらとも通底するものがあるように感じます。

とにかく、勢いを感じます。横浜ですが、機会があれば見に行かれたらどうでしょうか。

2013年4月14日日曜日

九州国立博物館

太宰府の観世音寺へ行った後、九州国立博物館へ。

九州国立博物館は2005年に開館した博物館。東京、京都、奈良に次ぐ4番目の開館です。丘の上に地面に沿うようにして造られた建物で、菊竹・久米設計共同体の設計です。

今回はじめて行って、びっくりしたのは、そのアプローチです。太宰府天満宮の奥から、長いエスカレータと動く歩道を辿って行くと、入り口のエントランスになります。

今回は、3階の特別展示室はヴェトナム展の準備中で、4階の文化交流展示室で所蔵品を中心とする展示と古武雄の陶器の展示がされていました。土器、銅鐸など考古学的展示が多かったのですが、私の興味を引いたのは、ガンダーラの仏伝図、ヴァーチャル・リアリティで再現された装飾古墳、古代の年代測定法紹介の一室でした。

九州国立博物館は、新しい博物館として、今後どう展開していくのか注目したいと思います。

太宰府 観世音寺

九州に行ったついでに、太宰府の観世音寺へ。

観世音寺は天智天皇が母の斉明天皇の冥福を祈り746年に建立した寺です。当時は、戒壇院も置かれていて、西日本で随一といわれた寺院です。梵鐘は日本最古で国宝になっています。

境内に「観世音寺宝蔵」があり、仏像13体が収められています。
丈六の《十一面観世音菩薩立像》《馬頭観世音菩薩隆三》《不空羂索観世音菩薩立像》など大きさに圧倒されます。造形的に面白かったのは平安期初期の一本彫りの《兜跋毘沙門天立像》です。

この後、九州国立博物館へ。