展覧会は、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の所蔵品を中心に、絵画作品だけでなく、陶器、壁紙のデザイン、家具、建物のデザイン図、写真と多様です。これは唯美主義が、美しい絵画を求めるだけでなく、生活環境を美的にすること狙っていたことを示しています。
私が、ロセッティや、「オリンピアの画家たち」といわれたフレデリック・クレイトン、アルバート・ムーアの「美しい絵」と同じくらい気になったのは、
- 唯美主義の作家たちの中で異色な、アメリカで生まれ、パリで絵画を習得し、ロンドンで活躍した、ジェイムス・マクニール・ホイッスラーの《ノクターン:黒と金−輪転花火》。ホイッスラーは、美しいものを求めるだけでない、絵画に革新を求めるアーティストです。
- ウィリアム・モリス、ウォルター・クレイトンなどの壁紙。第二次世界大戦後、抽象表現主義の画家たちはオールオーヴァの絵を、壁紙のようだといわれて腹をたてましたが、この展覧会ではハイ・アートと言われるものと、装飾用の壁紙が並んでいます。アートとは何か、装飾とは何か、考えさせられます。
- ローレンス・アルマ=タデマの《肘掛け椅子》。こんな形の椅子は見たことがない。無条件に一つ欲しい。もちろん、これが合う部屋といっしょに。こんな品物に出会えるのもこの展覧会の魅力になっています。
「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860−1990」展は、とにかく美しいと言われているものを見たい人、19世紀英国の美術はどんなものだったのかに興味がある人にお薦めです。三菱一号館美術館で2014年5月6日まで開催されています。
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