ハイレッド・センターは高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之により1963年に結成された美術家のグループ。今回の展覧会は、ハイレッド・センター結成50周年にちなんだもので、名古屋市美術館から渋谷区立松濤美術館に巡回されています。
ハイレッド・センターの位置づけを鳥瞰的に見れば、辻惟雄の『日本美術の歴史』にあるように、ダダ、ネオダダの日本に於ける表れだと考えられます。もう少し、その時代にズームしてみるならば、1950年代から1960年代初頭にかけては、政治的・社会的問題を意識したルポルタージュ絵画などが出現し、フランスのミシェル・タピエが仕掛けたアンフォルメルがブームを呼び、読売アンデパンダン展の中で芸術表現の拡張が模索がされた時代です。1960年代になると、アメリカのネオ・ダダなどと通底する従来の絵画・彫刻を超えたアート概念が提唱されていきます。「反芸術」がいわれたのもこの時期になります。このような時代にハイレッド・センターが出現してきます。
今回の展覧会では、ハイレッド・センターが行ったハプニング(今の言い方ならパフォーマンス)である、「山手線のフェスティバル」、「第5次ミキサー計画」、「第6次ミキサー計画」、「シェルター計画」、「大パノラマ展」、「ドロッピング・ショー」、「首都圏清掃整理促進運動」などの記録が展示されています。また、意図せず行うことになった「模型千円札裁判」に関しても充実した資料が展示されています。さらに各作家の代表的な作品の展示もあります。
この展覧会に行かれたら、ぜひ図録(2000円)も買って資料(証拠?)を精査し、目撃者気分・共犯者気分を味わうことをお勧めします。展覧会の楽しみが倍加します。
私には、「後に残らない行動自体をアートとする」芸術概念の拡張を目の当たりにすることも刺激的でしたが、個々の作家のアーティストとしての力量にも惹かれました。高松次郎の紐を使ったり影を使ったりする空間表現の追求、中西夏之のプラスチック・砂・洗濯バサミなど物質への執着、赤瀬川原平のオブジェクトを異化するコラージュ作家としての面白さに関心しました。
松濤美術館での「ハイレッド・センター 直接行動の奇跡展」は2014年3月23日までです。今東京国立近代美術館で開催されている「工藤哲巳回顧展」と共に観ると、この時代が良くわかると思います。
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