2013年6月23日日曜日

オディロン・ルドン 夢の起源 損保ジャパン東郷青児美術館

今日、最終日にあわてて行ってみました。

今回の展覧会は、オディロン・ルドン作品を多く持つ岐阜美術館所蔵の作品に、ボルドー美術館などの作品や関連資料を加えて、ルドンの画家としての成長の跡をたどれるようにした、よい企画の展覧会でした。まさに「夢の起源」はどこにあるのか探る楽しみがありました。

ルドンの作品に関しては、私は、どうしても黒の時代の異形な生物や眼を描いた作品に、いかにも頭で変なものを考えつきましたというようなところが見えて、馴染めないのですが、そのかわり色の着いた作品は、黒の時代の練習作品も含めて、たいへんいい感じだと思われました。

形の再現など気にしない、平面上の色とテクスチャーへのこだわりが、たいへん好ましいもののように思われます。平面上の色の漸進的変化や色の対比は、何時までみていてもあきません。

また機会があればルドンをみたいなと思わせる展覧会でした。

ファインバーグ・コレクション展 江戸絵画の軌跡 江戸東京博物館

1970年代からアメリカの収集家が集めた、日本の江戸期の絵画コレクションを紹介する企画です。

出展されている作品は江戸のビッグ・ネームです。
琳派から、俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一、神坂雪佳。
文人画から、池大雅、与謝蕪村、浦上玉堂。
円山四条派から、円山応挙、長沢蘆雪。
奇想派から、伊藤若冲、曾我蕭白。
浮世絵から、菱川師宣、懐月堂安度。

日本の江戸期絵画を好きになったアメリカのコレクターが、どのような作品を収集したのか、見に行くのも良いと思います。

江戸東京博物館で2013年7月15日までです。

2013年6月9日日曜日

佐脇健一 未来の記憶 目黒区美術館

昨日、いつも美術館見学をいっしょに行っている皆さんと、目黒区美術館で開催されている「佐脇健一 未来の記憶」展に行きました。

佐脇健一さんは、ブロンズや鉄の鋳造作品を中心に作品を創られていますが、今回は大きなインスタレーション、写真と絵を組み合わせた作品、ヴィデオ作品、木の箱を使った作品など、多様な作品が展示されていました。

目黒美術館の展示では、目黒区美術館、大分市美術館を俯瞰した作品に導かれて会場に入っていきます。

最初に、写真と絵を組み合わせたフォト・ドローイングの作品から見ることになります。一番大きな作品は、近代産業の遺物である「軍艦島」の建造物の写真に、手書きの筆あとが残る青い空を組み合わせた作品です。その空は細いグリッド線の上に描かれています。この写真と絵の組み合わせが不思議な感じを引き起こします。たぶん、遺物の写真だけであれば、その遺物の歴史的な意味をさぐったりすることになるはずです、ところがここには手書きの空が組み合わせれています。これにより、作者はこの風景を記憶の中に定着したかったのだと理解されます。そうすると、これを観る者は、その記憶を共有するように仕向けられることになります。

先に進むと、たくさんの木箱がならんだ部屋になります。木箱の中には、ここにはミニュチュアの産業遺物が入れられていて、内側の立ち上がる面には空と雲の写真が貼られています。図録では、これは東洋的な小宇宙で、神棚や仏壇のような礼拝的価値も見いだされると書かれていますが、私の印象では、西洋の聖人の遺物をいれた聖遺物箱のように感じられました。そこには過去からのメッセージが物体の形で目の前に置かれているようです。

2階にいくと、大きな鋳造作品があります。地面から切り取られたような作品には、原子力発電所の炉心や、放射性廃棄物の永久貯蔵施設、捨てられた無人偵察機など、メッセージ性の強いオブジェが載せられています。ここでは、素材の金属の質量がそこにある建造物や機械の動かしがたさを、金属の錆びた表面が長い時間の経過を表しているようです。

今回の展示では、ほとんどの作品には人が登場しません。そのため、これらの展示品は、思い出す人もいなくなった後に残る、記憶の残骸であるように感じられます。最初に感じた不思議さは、記憶の残骸を共有するよう作品が迫ってきたためかもしれません。

目黒区美術館での展覧会は、残念ながら、本日、2013年6月9日に終わってしまいますが、佐脇さんの作品は、また機会があれば観てみたいと感じます。

2013年6月5日水曜日

プーシキン美術館展 愛知県美術館

2011年4月に横浜美術館から名古屋、神戸と巡回する予定になっていた「プーシキン美術館展」。それが東日本大震災で中止になって、今年、愛知美術館、横浜美術館、神戸市立博物館と巡回しています。

横浜にくるまで待っていれば良かったのですが、ちょうど名古屋に行く序でがあったので、愛知県美術館に「プーシキン美術館展」を見に行きました。プーシキン美術館はフランス近代の絵画の収集で有名で、今回も19世紀から20世紀にかけてのフランス絵画が多く出展されています。

印象派、ポスト印象派以降で、私が興味を持ったのは、
ポール・ゴーギャン《彼女の名前はヴァイルマティといった》
ポール・ゴーギャン《働くなかれ》
アンリ・マティス《青い水差し》
マリー・ローランサン《女の顔》
キース・ヴァン・ドンゲン《黒い手袋をした婦人》
モイーズ・キスリング《少女の顔》
アドゥアール・ヴァイヤール《庭》
フィンセント・フォン・ゴッホ《医師レーの肖像》
エドガー・ドガ《バレエの稽古》
カミーユ・コロー《突風》

それ以前の作品では
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル《聖杯の前の聖母》
ジャン=レオン・ジェローム《カンダウレス王》
ジャック=ルイ・ダヴィッド《ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ》
ユベール・ロベール《ピラミッドと神殿》
フランソワ・ブーシェ《ユピテルとカリスト》
クロード・ロラン《アポロとマルシュアスのいる風景》
ニコラ・プッサン《アモリびとを打ち破るヨシュア》

展覧会企画としては、ありがちな海外有名美術館の収蔵品巡回展示ですが、気になる作家のまだ見ていない作品を観る機会としては良いのではないかと思います。

「プーシキン美術館展」は、愛知県美術館では2013年4月26日から6月23日まで、横浜美樹幹では7月6日から9月16日まで開催さます。

2013年6月3日月曜日

「桂ゆき ある寓話」展 東京都現代美術館

桂ゆきは、1913年生まれ1991年没のアーチストです。今年が生誕100年になります。

桂ゆきは、日本画と油絵を学んで、1931年21歳の時に、初個展「コラージュ展」でデビューしました。今回の展覧会では、桂ゆきの絵の特徴は(1)細密表現(2)コラージュ(3)戯画的表現であるとしています。

明治以後の日本の絵画、とくに前衛的であると評されている絵画には、古くさく感じるものが多くあるというのが、私の正直な感想ですが、桂ゆきの絵は今見て新鮮です。その理由は、画面構成力、テクスチャーの追求、色彩の選択の仕方にあるように思います。
人によっては戯画的なテーマに目がいくでしょう。大胆な画面構成、滑稽な動物の形態、楽しい童話的な雰囲気。ただ、私は、現代アートになぜ戯画的表現が必要なのか納得していない点があるので、戯画的な作品に関してはちょっと態度保留です。

桂ゆきは、日本の画壇やグループから距離を置いて活動した作家、世界を知ったうえで土着的ではない日本を表現した作家です。

「桂ゆき ある寓話」展は、東京都現代美術館で2013年6月9日までです。あと一週間で終了です。

2013年6月2日日曜日

レオナルド・ダ・ヴィンチ展 天才の肖像 東京都美術館

アンブロジアーナ図書館は、フェデリーコ・ボッローメオ枢機卿によりミラノに1607に設立された、西洋史上3番目と言われる図書館です。17世紀に、レオナルド・ダ・ヴィンチの『アトランティコ手稿』を収集しています。

現在開催されている、東京都美術館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」には、この『アトランティコ手稿』から絵画、光学、建築、平方、機械、人体飛行などに関するものが出展されています。

レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿や、レオナルド・ダ・ヴィンチの時代の資料に興味がある方には、行ってみる価値のある展覧会ではないでしょうか。東京都美術館で2013年6月30日まで開催です。