2014年5月30日金曜日

チベットの仏教世界 もうひとつの大谷探検隊 龍谷ミュージアム



関西で仕事があったので、空いた時間に龍谷ミュージアムの「チベットの仏教世界 もうひとつの大谷探検隊」へ。

大谷探検隊が西域からインドを調査をしたのは有名ですが、実はそれとは別に2人がチベットに派遣されて、チベット仏教の調査をしていました。今回の展覧会はその業績を紹介するものです。

ちょうど運よく学芸員のかたによるスライドでの説明があり、それを聞けたのですが。チベットにはインドで発展した大乗仏教の最後の形が伝わったのだそうです。そういうわけで中国や日本にはない経典に基づいた像などがあるという話で、そうだったのかと納得しました。

今回の展覧会で特に力を入れて展示されていたのが、現在のダライラマの前のダライラマが、遺言で、その時に渡った学僧、多田等観氏に贈った仏伝図です。仏伝図自体が日本ではめずらしいですが、特にこの仏伝図には、初転法輪から涅槃にいたるまでの知られていない仏伝がたくさんありたいへん珍しいものになっています。そこにはキリストの生涯にあるような、弟子をどのように獲得していったのかなどの伝記がたくさん描かれています。

今回の展覧会は6月4日までの開催です。チベットに興味がある方、仏伝図に興味がある方にはお勧めです。

2014年5月16日金曜日

マインドフルネス 髙橋コレクション展 名古屋市美術館

日本の現代美術の蒐集家で知られる高橋龍太郎さんのコレクション展です。
関西へ出張があったので、時間の都合をつけて行ってきました。

髙橋さんのコレクションは、部分的には色々な所、例えば会田誠展などで見ることがあったのですが、これだけ一堂に集まったのを見るのは初めてでした。
入り口で草間彌生の女子と犬のオブジェに出会うところから、期待を持たせられる展示になっています。展示は一階、二階、地下と広がっているのが、収集の規模の大きさを示しています。

展示は、草間彌生を始め、村上隆、奈良美智、会田誠、山口晃、鴻池朋子、束芋、蜷川実花、小谷元彦と、現代美術の有名どころを集めて多彩です。髙橋コレクションは、幼形成熟という意味のネオテニーというタイトルで展覧会になっていたこともありますが、いわゆる「大人」にならない夢の世界のような作品が多いことに注目させられます。

現代日本に出現した一群のアーチストをどう見るか考えるために、見に行くのも良いのではないでしょうか。

名古屋市美術館で、6月8日までです。

2014年5月11日日曜日

中村一美展 国立新美術館

中村一美さんという方は、勉強不足で知りませんでした。
今回、国立新美術館で中村一美さんの個展が開かれ、150点に及ぶ展示でその全貌が一堂に見られます。

中村さんは、西洋美術のモダニズムの頂点を示す抽象表現主義の研究を出発点に、日本・東洋の美術も研究し、新たな制作原理を確立していったようです。
基本は自然のものそのものの再現ではなく、抽象化された形象を見せる作品となっています。しかしタイトルには、文学的な含意があるタイトルがつけられているものも多く、絵画平面だけに収まらない、人が外的にもつイメージにつながる構想力にも関心がありそうです。

作品により幾何学的な線を強調したものと、色面の対比を基本に記号的な模様があるものに別れるようですが、いずれも垂直方向の強調と斜めの線の使い方が観る人の近くに刺激を与えるようにみえます。

私にとっては、中村一美さんの作品はたいへん興味のもてるものでした。国立新美術館で5月19日までですが、興味のある方はぜひ行かれることをお勧めします。

2014年5月5日月曜日

ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション Bunkamuraザ・ミュージアム

連休中は遠くへ出かけると混んでいると思い、近くのBunkamuraザ・ミュージアムへ。
ポルディ・ポッツォーニ美術館の作品が展示されています。
ポルディ・ポッツォーニ美術館は、1881年にミラノの貴族ジャン・ジャコモ・ポルディ・ポッツォー二をコレクションを展示するために開設された美術館です。コレクションは、古代、鎧・武器、陶磁器、時計、東洋、家具、ガラス器、本、宝石などたいへん幅広いのですが、今回の展覧会では、鎧や時計が少しと、あとはイタリアを中心とする絵画が展示されています。それでも当時の貴族のコレクションがどのようなものであったか、その一端がわかります。

今回一番の目玉になっていたのが、15世紀のイタリアの画家ポッライオーロです。ポッライオーロは、ユニークな構図のロンドン・ナショナル・ギャラリーにある《聖セバスティアヌス》が有名ですが、今回来ている《貴婦人の肖像》もなかなか見応えのある作品で、顔の輪郭の微妙な線、髪飾りやネックレスなどいい感じです。

サボナローラに影響された後の、ボッティチェッリは何となく敬遠していましたが、《死せるキリストへの哀悼》は素通りできずに見入ってしまいました。ここにある線はルネサンスではなくマニエリスムだと思いました。

時代は下って、ヴェドゥータ画の大家、カナレットの《廃墟と古代建造物のあるカプリッチョ》もカナレットらしい変さ加減がでていて楽しめます。

「ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション」は、イタリアが好きな方にはお薦めの展覧会です。5月25日までBunkamuraザ・ミュージアム