2014年3月31日月曜日

シャガール展 静岡市美術館

もう終了してしまいましたが、静岡市美術館で開催されていたシャガール展を観ての観想です。この展覧会は2013年の夏から、北海道立近代美術館、宮城県美術館、広島県立美術館、静岡市美術館と巡回し、最後に2014年4月から愛知県美術館で開催されます。

展覧会コンセプトは60才を過ぎたシャガールが、1950年以降、歌劇場、美術館、大聖堂などの大きな空間を飾る作品を制作したのを見ていこうという企画です。

シャガールは、天上画、ステンドグラスなどの様々なフォーマットの中でも、シャガールが獲得したシャガールらしい表現を行っているように見えます。奥行きの無い平面性を強調する絵の具の表現、稚拙ともいえる形象の中に懐かしいようなシンボルを見いだす表現。20世紀後半の作品としてのコンテンポラリーな感じの無さが、劇場、教会などという伝統的な建造物とマッチしているようです。

私の個人的な観想としては、馴染みのシンボルに囲まれる気持ち良さと、20世紀後半の表現がこれで良いのかという思いが交差した、というのが正直な所です。

興味がある方は、名古屋に行ってみると良いと思います。


2014年3月16日日曜日

「幻触」と石子順造 静岡県立美術館

この展覧会は、放っておけない展覧会でしたが、ブログに書きにくい展覧会でした。そこで、展覧会に行った順とブログの順が逆転してしまいました。

展覧会には、静岡で結成された「幻触」というグループとそれに関わった評論家石子順造にまつわる作品や資料が展示されています。

ブログに書きにくかったわけは、まだまだ理解が及ばないことが多いためだと思います。
  • 『幻触」というグループがなぜ静岡で結成されたのか、それは東京や関西のアーティストの活動と何が異なっていたのか
  • 評論家とアーティストはどのような関係だったのか、
  • 今回も展示されている「ハイレッド・センター」や「もの派」との関係は?
  • 「幻触」の思想はどう引継がれていったのか
そんなことが気になります。

今ちょうど、東京国立近代美術館で「あなたの肖像 工藤哲巳展」が、渋谷区立松濤美術館で「ハイレッド・センター 直接行動の奇跡」が開催されています。この展覧会と合わせて、1960年代とは何かもう一度確認したいという思いが強くなっています。

「「幻触」と石子順造」展は、静岡県立美術館で2014年3月23日までの開催です。


相国寺承天閣美術館 円山応挙展

京都でちょっとイベントがあり泊りがけで行ってきました。二日目には時間が空いたので、相国寺承天閣美術館で開催されている「円山応挙展」へ。

今回珍しいところでは、応挙本邦初公開の相国寺開山堂襖絵、与謝蕪村の慈照寺方丈襖絵などがありました。応挙作品は、定番の《牡丹孔雀図》、《朝顔狗子図》などを含めて20点以上展示されています。さらに応挙が研究に使ったような明朝の絵画が展示されたり、弟子の長沢蘆雪、原在中の作品もあり楽しめます。

この展示を見て、改めて、写生と言いながら単純な写実で無い、応挙の表現の多様性に感心しました。開館三十周年記念「円山応挙展」は2014年3月23日までです。

今回の京都でのイベントは、いい年をしての大学(京都造形芸術大学)の通信教育部卒業式だったので、まだ桜は咲いていませんが、春の気分での美術館巡りでした。

2014年3月9日日曜日

ハイレッド・センター 直接行動の軌跡展 松濤美術館

ハイレッド・センターは高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之により1963年に結成された美術家のグループ。今回の展覧会は、ハイレッド・センター結成50周年にちなんだもので、名古屋市美術館から渋谷区立松濤美術館に巡回されています。

ハイレッド・センターの位置づけを鳥瞰的に見れば、辻惟雄の『日本美術の歴史』にあるように、ダダ、ネオダダの日本に於ける表れだと考えられます。もう少し、その時代にズームしてみるならば、1950年代から1960年代初頭にかけては、政治的・社会的問題を意識したルポルタージュ絵画などが出現し、フランスのミシェル・タピエが仕掛けたアンフォルメルがブームを呼び、読売アンデパンダン展の中で芸術表現の拡張が模索がされた時代です。1960年代になると、アメリカのネオ・ダダなどと通底する従来の絵画・彫刻を超えたアート概念が提唱されていきます。「反芸術」がいわれたのもこの時期になります。このような時代にハイレッド・センターが出現してきます。

今回の展覧会では、ハイレッド・センターが行ったハプニング(今の言い方ならパフォーマンス)である、「山手線のフェスティバル」、「第5次ミキサー計画」、「第6次ミキサー計画」、「シェルター計画」、「大パノラマ展」、「ドロッピング・ショー」、「首都圏清掃整理促進運動」などの記録が展示されています。また、意図せず行うことになった「模型千円札裁判」に関しても充実した資料が展示されています。さらに各作家の代表的な作品の展示もあります。

この展覧会に行かれたら、ぜひ図録(2000円)も買って資料(証拠?)を精査し、目撃者気分・共犯者気分を味わうことをお勧めします。展覧会の楽しみが倍加します。

私には、「後に残らない行動自体をアートとする」芸術概念の拡張を目の当たりにすることも刺激的でしたが、個々の作家のアーティストとしての力量にも惹かれました。高松次郎の紐を使ったり影を使ったりする空間表現の追求、中西夏之のプラスチック・砂・洗濯バサミなど物質への執着、赤瀬川原平のオブジェクトを異化するコラージュ作家としての面白さに関心しました。

松濤美術館での「ハイレッド・センター 直接行動の奇跡展」は2014年3月23日までです。今東京国立近代美術館で開催されている「工藤哲巳回顧展」と共に観ると、この時代が良くわかると思います。