2015年3月22日日曜日

コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流 東京国立博物館

東京国立博物館で開催されている「インドの仏」展には、コルカタ(2001年から正式にこの地名になっているようですが、その前は英語読みでカルカッタといわれていました)にある博物館から、仏教に関する良い作品がたくさん来ています。

今回は平成館が使えなかったせいか、表慶館で開催されていますが、少し小さめの建物の雰囲気と展示が合っていて、良い感じです。

最初に入ったところにある、グプタ朝サールナートの仏立像からぐっと引き込まれます。端正な顔、衣紋のないぴったりした着衣の下に感じる仏の身体、美しい植物文の頭光など、見どころがたくさんあります。

そのあとも、紀元前の仏の表現をみられるバールフトの欄楯浮き彫りがあり、釈迦の生涯ををたどる仏伝図があり、図録でしか見たことがないものを間近にみられて興奮します。

西洋との交流を感じるギリシャ彫刻との関連を感じさせるガンダーラの仏、密教化が進んだパーラ朝の抑揚が強くクセのある仏、南インドの顔に特徴があるチョーラ超の仏など、多様なインドの仏教美術が実物で見られます。

また、インドのヤシなどの樹皮に基づくと言われる珍しい形状の経典に描かれた、多臂の仏たちの細密画も珍しいものです。

全体を見終わって、歴史や地理を整理してみると、展示作品の理解が深まり、興味が倍増するだろうと思われました。例えば、仏伝図の展示などは様々な時代のものが隣り合わせで並んでいるので、仏伝の内容を理解するばかりでなく、年代の違いによる表現の違いを見分けると、より興味が湧いてきます。私も、帰りに図録を買い、もう一度観に行こうと思っています。

仏像に興味がある方、またインド美術に興味がある方には、必見だと思われます。展覧会は2015年5月17日までです。

2015年3月14日土曜日

グエルチーノ展 国立西洋美術館

グエルチーノ(本名:ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ 1591-1666年)は、ボローニャ派の画家で、対抗宗教改革の中で敬虔な感情を喚起するバロック的絵画を製作しました。国立西洋美術館のWEBには、「かつてはイタリア美術史における最も著名な画家に数えられました。19世紀半ば、美術が新たな価値観を表現し始めると、否定され忘れられてしまいましたが、20世紀半ば以降、再評価の試みが続けられており、特に近年ではイタリアを中心に、大きな展覧会がいくつも開催されています」とあるので、日本ではあまり知られていないのも無理はないかもしれません。

グエルチーノの作品の多くは、彼の故郷の、ボローニャの近くのチェントにありますが、2012年5月の地震で美術館や教会が大きな被害を受け、展示できない状況になってしまいました。それもきっかけになって今回の展覧会が実現したということです。グエルチーノ作品を間近に見られるのは嬉しいのですが、それが地震のせいだというのは複雑な気分になります。

展示は、ボローニャ派のルドヴィコ・カラッチやグイド・レーニの作品が数店出店されていますが、全44点の大部分はグエルチーノの作品になっています。章立ては、時系列になっています。ボローニャ派は、フィレンツェの線描と、ヴェネチアの色彩による質感を引き継ぎながら、バロック的な表現をするようになったと言われていますが、グエルチーノもその伝統に沿っていると言えます。

17世紀、フランドルやオランダで新たな表現がされるようになった時期に、イタリアにおいて、対抗宗教改革により推進された敬虔な宗教画とはどんなものであったかを知るには良い展覧会です。ちょうど、国立新美術館で開催されている「ルーブル展」の17世紀の北方の風俗画と比べてみるのもおもしろいと思います。