2014年10月21日火曜日

日本国宝展 東京国立博物館

東京国立博物館で、国宝だけを集めた企画展が開催されています。このような企画は、平成になってから3回しか行われてなく、前回は2000年の開催でしたから、かなり久しぶりな企画です。前後期を合わせると120点を超える作品を見ることができます。

今回は「祈り、信じる力」をサブタイトルにして、五章に分けて展示されています。第一章は「仏を信じる」で飛鳥時代から平安時代にかけての仏教美術、第二章は「神を信じる」で土偶・銅鐸・神像、第三章は「文学、記録に見る信仰」で絵巻・書跡・典籍・古文書、第四章は「多様化する信仰と美」で鎌倉時代から室町時代の美術品、第五章は「仏の姿」で仏像となっています。

博物館や美術館で、造形遺品をもともとのコンテクストを離れて、視覚の興味として見ることの是非はあると思いますが、教科書や美術書のなかでみていたものに直接触れる意味は大きいと感じさせられます。

展示は、10月15日から11月9日までが前期、11月11日から12月7日までが後期になっていて、展示替えがあります。特別出品の正倉院宝物は10月15日から11月3日の展示です。さらに10月26日までしか展示されない作品もあります。事前に出展期間の情報をウェブなどから入手して、観たいものを確認してから行かないと、観たい作品を見逃しそうです。

作品リストはこちらから
http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=3890

2014年10月11日土曜日

ウィレム・デ・クーニング展 ブリヂストン美術館


2014年10月8日からブリヂストン美術館で「ウィレム・デ・クーニング展」が開催されています。デ・クーニングを日本でまとめて見られる機会は少なかったので、早速行ってきました。

抽象表現主義は、日本でも2012年に回顧展が開催されたジャクソン・ポロックや、川村記念美術館に良いコレクションがあるマーク・ロスコが有名ですが、ウィリアム・デ・クーニングも見逃せない作家です。

今回は、パワーズ・コレクションの1960年代の女性像を中心に35点が、入口に近い2室に展示されています。パワーズ・コレクションのポップ・アート作品は2013年に新国立美術館で開催された「アメリカン・ポップ・アート」で見ることができましたが、パワーズ・コレクションはポップ・アートだけではなかったわけです。パワーズ・コレクションの他には、国内の美術館の所蔵品から7点、ニューヨーク近代美術館から1点、個人蔵の1点が展示されています。

ウィレム・デ・クーニングは、1904年オランダのロッテルダム生まれ、1926年に渡米して、ニューヨークで抽象表現主義の作家といわれるようになっていきます。デ・クーニングの代表作は1950年代の女シリーズで、その強烈な色使い、グロテスクなイメージ、立体感を拒絶した平面性に特徴があります。今回出展されている作品は、作家60才代の作品が中心になっていて、強烈さは少し整理されて弱まっているかもしれませんが、デ・クーニングらしさは十分感じられるものになっています。

今まで図版でしか見ていなかったデ・クーニング作品を目の前にすると、赤と緑の補色を大胆に使った色遣い、白い絵の具が生なまま存在する絵の具の物質感、どこから始まりどこで終わるのかわからない線から見えてくる形象、眼や口を取り出して強調した顔のイメージ、立体感を拒否した筆跡と、見えてくるものがたくさんあります。デ・クーニングは、何かを表象することを徹底的に否定し、作品自体で存在することを追求したのではないかと、感じます。

抽象表現主義というと「アクション・ペインティング」という言葉がセットのように付いてまわりますが、これはハロルド・ローゼンバーグという批評家が書いて有名になった言葉です。もっとも有名なアクション・ペインターはジャクソン・ポロックですが、ローゼンバーグはデ・クーニングを見てアクション・ペインティングといったと言われています。デ・クーニングが、パネルの前でどんな行為を行ったのか、その結果がどうなったのかを考えるのも良いのではないでしょうか。

「ウィレム・デ・クーニング展」は2015年1月12日までの開催です。