フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、スイスのローザンヌ生まれのナビ派の画家で、多くの油絵と木版の作品を残していますが、それほど知られた画家であるとはいえないようです。
今回の展覧会は、オルセー美術館とRMNグラン・パレにより組織化され、2014年1月までグラン・パレ、6月までアムステルダムのゴッホ美術館、9月まで三菱一号館美術館に巡回する回顧展です。
日本の展覧会タイトル「冷たい炎の画家」よりも、オリジナルの「Fire Beneath the Ice」のほうが、今回の展覧会意図を表しているかもしれません。画面表面の滑らかさの下に、表現したい内容が炎をあげている、それを作品のなかに探ってみようというわけです。オルセー美術館・オランジェリー美術館総裁のギ・コジュバル氏は「ヴァロットンは、欲望と禁欲の間の葛藤を強迫観念的な正確さで描き、男女間の果てなき諍いに神話的なスケールを与えています」と言っています。
三菱一号館美術館が所有している多くの木版画作品も展示され、ヴァロットンとはどのような画家だったのかを知る良い機会になっています。私が気に入ったのは、油絵で公園の人物を多視点で描いた《ボール》です。
「ヴァロットン 冷たい炎の画家」展は、印象派の後に出現した多様な作家に興味をもっている方にお薦めの展覧会です。三菱一号館で2014年9月23日までの開催になっています。