2012年1月24日火曜日

ザ・ベスト・オブ・山種コレクション No2

ブログを書く順が逆転しましたが、先週土曜日の冷たい雨が降るなか、山種美術館を訪れました。1月に入ってから、ザ・ベスト・オブ・山種コレクションの後期の展示が行われています。後期の展示は、「戦前から戦後へ」ということでより現在に近くなっています。
会場は、雨にもかかわらずかなり混んでいました。近代の日本画も人気があるのがわかります。

目玉は、速水御舟の《炎舞》です。これは初めて見ました。
図版を見て思っていたよりも実物は小さな作品でした。きっと絵の迫力が大きな絵をイメージさせたのでしょう。また、よりリアルな表現の作品かと思っていましたが、実物を見てリアルを指向した作品でないのがわかります。炎は仏教の彫刻のように様式化されています、また炎の上を舞っている蛾はすべて正面を向いています。そこにあるのは、リアルさを異なる次元の真実にトランスレートした世界のように感じました。

その他の作品で面白かったのは、奥村土牛でしょうか、《鳴門》《醍醐》など自然を映した絵が気に入りました。

この展覧会は2月5日までの開催です。

2012年1月22日日曜日

北京故宮博物院200選 No2

今日は東京国立博物館で行われている北京故宮博物院200選展に再び行ってきました。前回は1月4日に行って清明上河図を中心に見たのですが、今日はその他の作品をじっくり見ました。天気は良くなかったのですが、日曜日ということもあり会場はかなり混んでいました。私は今日はパスしましたが、清明上河図のほうは210分待ちとなっていて、建物の外まで列がのびていました。

全体を通して改めて気づいたのは、一言で中国といっても、その実体は多様な民族の関わりがあり、中国の美術もその中で形作られてきたということです。

文人画が発達した北宋・南宋の後は、モンゴル民族の元王朝(1271−1368)となります。普通の感覚でいうと、他民族に支配される時代にはそれまでの文化は廃れてしまうのではないかと思ってしまいますが、そうならないのが元の時代の面白いところです。いろいろ葛藤はあったのでしょうが、宋に仕えていた人が元にも仕えて大きな影響力を持ったりしています。
今回の展示品の中でも、元のものは良いものが来ています。例をあげると、
趙 孟頫(ちょうもうふ) 《水村図巻》
朱德润 《秀野軒圖卷
柯九思 《清閟閣墨竹図軸


清(1644−1912)は女真族の王朝ですが、真の皇帝がチベット仏教を信仰していたというのは初めて知りました。
チベット仏教はチベットが7世紀から14世紀にインドから直接取り入れた仏教で、後期密教の強い影響を受けています。
チベット仏教関係の展示にも面白いものがあります。

《大威徳金剛(ヤマーンタカ)立像》、清時代
《宝生仏坐像》、インド・バーラ朝
《観音菩薩立像》、チベット
《上楽金剛(チャクラサンバラ)立像》、チベット

今回は《乾隆帝是一是二図軸》の展示が凝っていました、図は乾隆帝が中国の歴史的文物に囲まれ、文人の姿で描かれているというものです。展示室には、そこに描かれているテーブルや、青銅器・陶磁器などが一緒に展示されています。この軸は清朝が意識的に漢民族の伝統の上に成立しているのだということを示す興味深い図になっています。

さすがに中国は奥が深いですね。中国美術への関心がますます強くなりました。





2012年1月20日金曜日

パリへ渡った石橋コレクション 1962年春

東京駅の近くのブリジストン美術館は便利なので時間があると立ち寄ってしまいます。2012年1月7日から3月18日までは、「パリへ渡った「石橋コレクション」 1962年春」が開催されています。

石橋コレクションは、ブリジストンタイヤ創業者の石橋正二郎さんのコレクションで、青木繁などの日本の作品や、フランス印象派から現代までの海外の作品が、集められています。

1962年の春に、そのなかからフランスの作品50点が選ばれ、当時パリのパレ・ド・トーキョーにあったパリ国立近代美術館で、「東京石橋コレクション─コローからブラックに至るフランス絵画展」として展示されました。いわば里帰りした訳です。当時は日本にもフランス絵画の良いコレクターがいるんだと感心されたようです。(国立近代美術館は1977年にパレ・ド・トーキョーからポンピドゥー・センターに移転しています)

今回は、ブリジストン美術館60周年を記念して、50年前にフランスに行った作品を改めて見てみようという趣旨の展覧会です。

作品は、コロー、ドラクロア、ドーミエ、ドービニー、クールベ、モンティセリ、ピサロ、マネ、ドガ、シスレー、セザンヌ、モネ、ルノワール、ルソー、ゴーガン、シニャック、ボナール、マティス、ルオー、ヴラマンク、デュフィ、ドラン、ピカソ、ブラック、ユトリロ、シャガールと、ビッグ・ネームばかりです。
全体を通して、前衛的な尖った作品はなく、色や筆致がきれいな見て心地よい作品が多いと感じます。これはコレクターのセンスかもしれませんね。

私は、もう当たり前すぎて申し訳ないですが、セザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》が気に入りました。

金曜日の夜6時半頃から8時近くまで会場にいたのですが、その間に会った観客の人はほんの数人で、一部屋占有状態が続いて、たいへん贅沢な時間でした。

2012年1月17日火曜日

村上隆さんインタビュー記事

2012年1月17日、朝日新聞朝刊に村上隆さんのインタビュー記事が載っていました。
横見出しとして「世界でトップを取る」。縦見出しには「3.11で社会変化、芸術家も動くとき、もだえ苦しみ作る」とあります。「世界でトップ」の話をしたいのでしょうか、「3.11後の芸術家」の話をしたいのでしょうか、見出しだけだとちょっと不明です。記事を読んでみると、見出しどおり、世界でトップの話と、3.11後の芸術家の話が、並列で書かれていました。

面白いと思った所を紹介します。

インタビュアーが村上さんはクールジャパンの旗手ですねと言ったのに対して、「クールジャパンなどとは外国では誰も言っていない。僕はクールジャパンとは何も関係ない」
村上さんの何が評価されていると思いますかという問いに、「日本の美を解析して、世界の人々が『これは日本の美だな』と理解できるように、かみ砕いて作品を作っていること」「僕は戦後日本に勃興したアニメやオタク文化と、江戸期の伝統的絵画を同じレベルで考えて結びつけ、それを西洋美術史の文脈にマッチするよう構築し直して作品化するということを戦略的に細かにやってきました」
そのあと、村上さんが「芸術企業論」や「芸術闘争論」にも書かれている言説が続きます。日本の芸術家は、グローバルな美術市場や美術作品流通のメカニズムの中で、戦略性をもって活動すべきだという論です。
最後に、3.11以降の社会に対し、「芸術ごときで世の中は変わらないが」と言いつつ、国際社会に発信し続ける活動家になると宣言されています。
今は、3.11のメモリアルになる全長100mの五百羅漢図を、100人のスタッフを使って作成中で、これを2月にカタールのドーハの個展で展示する予定だそうです。

今日のこの新聞記事を見る前に、村上隆さんが2011年11月9日にニューヨークのクリスティーズで「New Days」という3.11のチャリティー・オークションを仕掛け、6億8千万円の売上を上げた、という美術手帳2012.01に載っている記事を読んでいたので、2つの情報を合わせて、改めて、村上さんのグローバルで、問題意識を持った、戦略的な活動の一端を見たような気がしました。

2012年1月15日日曜日

泉屋博古館分館 中国青銅芸術

2012年1月7日から2月26日まで、六本木にある泉屋博古館分館開館10周年、「神秘のデザイン ー中国青銅芸術の枠ー」が開催されています。
これは、分館が東京に開館してから10年経つのを記念して、住友家が収集したコレクションの中でも貴重な中国青銅器を紹介するものです。

商(殷)・西周・春秋・戦国期の青銅器が55点、秦から清にかけての青銅器が33点、展示されています。青銅器は今回の「北京故宮博物院200選展」にも来ていますし、中国の文物の展覧会にも来ていますが、これだけ青銅器だけが並んでいるのを見ると壮観です。しかも一点づつ模様の説明があり、主要な作品には拡大写真での説明があり、X線CTスキャナによる断面の図もあります。
なにしろ周の時代の青銅器の模様は細かいですから、図録だけではわからないことがたくさんあります、それを近くでじっくり見られるます。

周時代の青銅器には、怪獣の顔の形を模様化してある、饕餮文(とうてつもん)が付いているものが多いのですが、それにもいろいろなパターンがあり、それぞれの表現の工夫があることが見えます。
また、龍も、虁文(きもん)という横向きで1本足がついた模様でたくさんでてきます。

3000年前の人がどんなものを作っていたのかと興味を持ったら、ぜひ一度行ってみると良いと思います。


2012年1月14日土曜日

フェルメールからのラブレター展

人の真実は日常のさりげない中にあると思うのなら、17世紀のオランダ絵画を見に行かなければいけません。とくにその中でもフェルメールです。そこには、神話もなく、宗教的高揚もなく、大事件もなく、嵐もなく、狂気もありません。とくにフェルメールでは、乱痴気騒ぎも、声高な教訓もありません。

今、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「フェルメールからのラブレター展」を見にいきました。
この展覧会は、3点のフェルメール作品を中心に、人と人をつなぐコミュニケーションというテーマを持って17世紀オランダ絵画を集めたものになっています。フェルメールの作品はワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵の1665年に描かれた《手紙を書く女》、アムステルダム国立美術館所蔵の1663-4年に描かれた《手紙を読む青衣の女》、アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵の1670年に描かれた《手紙を書く女と召使い》です。
フェルメールの他にも、ヤン・ステーンの教師と子供の作品、ピーテル・デ・ホーホの室内で会話する人の作品など、20人を超える画家の作品が展示されています。

フェルメールのコーナーでは、最初に《手紙を書く女》があります。手紙を書きかけの女性がこちらを向いている図です。黄色い服の色と、そこにあたる光が、何とも良い感じです。
次は《手紙を読む青衣の女》です。青い服を着た女性が横を向いて手紙を読んでいる図です。この作品はちょうど修復を終わった後で、色もだいぶ復元されたようです。色の微妙な色合いがたいへん素晴らしいです。
最後に《手紙を書く女と召使い》です。これは左側に窓があり部屋全体があかりに包まれています。女性がこちらに向いて手紙を書いていて、その近くに窓の外を向いて召使いが立っています。でもこれは、なんかリアリティが無い、精妙さが足りないと感じました。このなぞの理由は後になってわかります。

この展覧会は、《手紙を読む青衣の女》の修復がどう行われどう変わったかという展示があったり、当時の手紙は封筒に入れなかったとか、手紙の文例集があったとか、手紙に関するちょっとしたパネルがあったり、絵以外にもなかなか楽しめます。

展覧会に行くと、図録を買おうか買うまいかいつも悩むのですが、この展覧会の図録は買ってしまいました。この図録の中には、「フェルメールの時代の人々の絆」「17世紀のオランダ文学にみる正しい暮らし方の伝達法」「”デルフトのフェニックス”、または名声のゆくえ」「「文遣い」から「文書く女」へ 遠くを近きにする術一個の快楽の在り方」など面白そうな小論が並んでいたからです。読むのが楽しみです。

フェルメールの実物が3点もあり、17世紀らしいオランダの絵画が見られる、お薦めの展覧会です。金曜日の夜に行ったのですが、比較的すいていて、絵の近くでじっくり見ることができてたいへん満足しました。2012年3月14日まで開催されています。

帰ってきてから、以前買った、『フェルメール論』小林頼子著、八坂書房、2008、を読み返してみました。すると、何か変だと感じた《手紙を書く女と召使い》は、様式として完成されたが、繊細な処理は放棄され、単純化され、誇張された時期の作品であると書かれていました。そうだったのかと納得しました。


2012年1月10日火曜日

それぞれの時代のカラー・パレット

先週末に本屋さんをぶらぶらしていると、普段は近づかなデザインの書棚にふっと気になる本がありました。それは、パントン社から出版されている『アート・ファッション・インテリアの流行が彩る 10世紀の配色』です。
こういうのに目が止まるのが、オンライン・ブックストアではない、リアル本屋さんの魅力ですね。

内容は、20世紀を10年毎に区切り、それぞれの時代の、商品、ポスター、アート、ファッションなどの代表的な図版を選び、そこで使われている色彩をカラー・パレットのかたちで示すことにより、その時代の色を探そうというのもです。

それぞれの10年間に、7から9のカラー・パレットがあります。
例えば、1900年代は、「エドワード朝」「アーツ・アンド・クラフツ運動」「ジュエル・ストーン」「玉虫色の輝き」「女性の躍進」「ポワレの革命」「野獣派」の7種類のカラー・パレットが紹介されています

1900年代の、野獣派のカラー・パレットの中身は次のようになっています。

  • Jaffa Orange
  • Fusion Coral
  • Pink Lavender
  • Confetti
  • Strong Blue
  • Pompeian Red
  • Fluorite Green
  • Sycamore
1920年代の、バウハウスのカラー・パレットはこうです。
  • Moonless Night
  • Violet Storm
  • Lavender
  • Delft
  • Oxblood Red
  • Burnt Ochre
  • York Yellow
  • Sunflower
このブログでは色を紹介できないのが残念。

とうぶんこれで楽しめそうです。