2012年7月7日土曜日

トーマス・デマンド展 会期は明日まで。東京都現代美術館

東京都現代美術館で「トーマス・デマンド」展が開催されています。トーマス・デマンドは現代ドイツの作家です。

トーマス・デマンドの作品は、人がものを認識する工程を意識させるようなものです。

東京都現代美術館では以前の企画展でもありましたが、今回も、最初の一巡はパンフレットなしで廻り、次いでパンフレットを見ながら廻ってくれというものでした。

最初の一巡。
いろいろな題材の模型を紙で作り、それを写真に撮った作品がならんでいて、「実物そっくり」「でもやっぱり紙で軽い感じ」「リアリティがないだけ奇麗」というのが感想。

パンフレットをもらっての一巡。
単に壁から外の光がもれている作品と思ったのは、ジャクソン・ポロックが使っていたアトリエの写真をもとにして、それを紙で再現し、さらにそれを写真にした作品であると判明。
単なるバスルームだと思ったのは、死体が風呂に浮かんでいるのを見つけた事件記者が、警察に届ける前に、中に踏み込んでスクープにしたことにより、物議をかもした写真を、紙で模型にして、それをさらに写真にした作品であると判明。
というような作品が続いて、頭がくらくらしてきます。
福島第一原子力発電所の事故後の制御室に最初に明かりをつけた時の写真から作った作品などもあります。

ものとは何、できごととは何、それを再現するとは何、表現するとは何、といろいろ考えさせられる展覧会です。

展覧会の会期はもう残り少なく、明日(7月8日)までですが、もしも明日時間がある方にはお勧めです


「具体」-ニッポンの前衛 18年の軌跡  国立新美術館

まだ戦争が終わって10年も経たない1954年に、当時の前衛的美術家が吉原治良のもとに集まり、具体美術協会「具体」を結成しました。それは18年続き1972年に吉原治良の死とともに終わりになります。この展覧会は、その日本の前衛美術ムーブメントを振り返ってみる展覧会です。

こういう展覧会を見に行く時、当時輝いたものが残念なものに変質していないかという危惧があります。まだ時間のフィルターにかかっていないが、賞味期限になってしまった作品に出会う危惧があるわけです。
当時の熱気を追体験できるか、それとも見たくないものを見てしまうのか。期待半分、怖さ半分で、展覧会会場に行きました。

国立新美術館一階の会場は、金曜日の夕方という事ですいています。

以下は感想です。

  • 「具体」が最初は展覧会を開くよりも、「具体」という冊子をつくり、自らの作品を国内外に知ってもらおう事に重点を置いていたという事は知りませんでした。「具体」の2号と3号はジャクソン・ポロックにも送られていました。これは美術家集団の試みとしては新しい試みですね。
  • 今年の2月から5月まで東京都現代美術館で田中敦子さんの展覧会が開催していましたが、そこにもあった作品が今回も展示されていました。現代美術館の時と同様に、ベルで大きな音を出す作品が、会場に鳴り響いています。田中敦子さんは今でも現代の作品として通用します。
  • 白髪一雄さんは、足で描くアクション・ペインティングで有名で、今回もそういった作品も展示されていましたが、私には、《超現代三番叟》という真っ赤で大きな舞台衣装に興味を引かれます。
  • 「具体」と「アンフォルメル」との接近に関しては知っていましたが、今回改めて、具体メンバーとミシェル・タピエが写った写真などを見て、その関係の深さが理解されました。海外に作品をもっていきやすいように、当初は多くあったインスタレーション作品が少なくなり、絵画作品が増えたというような、解説もありました。そういうこともあったのですね。
  • 私個人の感想としては、アンフォルメル的であったり、暑い抽象といった作品でないものに、面白いものがありました。
9月10日までですので、興味ある方は行かれてはどうでしょうか。今見ても面白いものがたくさんあります。

2012年7月1日日曜日

ベルリン国立美術館展 国立西洋美術館

早く行きたいと思っていた、ベルリン国立美術館展に行ってきました。

ちょっと前に、上野に行った人から、西洋美術館の前に列ができていたという話も聞いていたので、混雑を覚悟だったのですが、東京都美術館で昨日から開催されているマウリッツハイス美術館展に人は流れて行ったのか、列は無し、絵の前も押し合いへし合いでなくゆっくり鑑賞できました。ラッキーですね。

私の注目作品は、

  • チーマ・ダ・コネルアーノ工房、《聖ルチア、マグダラのマリア、アレクサンドリアの聖カタリナ》、1490年頃、油彩・板
    ヴェネチア初期ルネサンスの作品です。3人の聖女が調和のとれた配置、色彩で、描かれ。静かな空間を作り出しています。
  • ティルマン・リーメンシュナイダー派、《聖母戴冠》、1510年頃、菩提樹材
    ドイツの中世的題材の彫刻。素朴な味わいで、聖母マリア信仰が盛んだったんだなとわかります。
  • グレゴリア・ディ・ロレンツォ・ディ・ヤコポ・ディ・ミーノ、《女性の肖像》、1470年頃、ストゥッコ
    イタリアルネサンス後期の典型的な肖像彫刻。一般の人をモデルに理想美を追求するとこうなるかというような作品。
  • アルブレヒト・デューラー、《ヤーコブ・ムッフェルの肖像》、1526年頃、油彩・板のちにカンヴァスに張り替え
    今更言うのもへんだけれど、やはりデューラーはうまい。
  • ルーカス・クラナッハ(父)、《ルクレティア》、1533年、油彩・板
    昔、美術書で最初にクラナッハのヌードを見た時、奇妙に官能的でなんて変な絵なんだと思ったのを思い出しました。
  • ヤン・ダヴィッドゾーン・デ・ヘーム、《果物、花、ワイングラスのある静物》、1651年、油彩・カンヴァス
    オランダの画家、非常に緻密な静物画。葉っぱに毛虫がついているところを見届けてください。
  • ヨハネス・フェルメール、《真珠の首飾りの少女》、1662−1665、油彩・カンヴァス
    これに関しては何も説明はいりませんね。今回は1mくらいの近さから、「早く先に進んで」などと言われずに、ゆっくり見ることができました。帰ってきてから、あらためて図録の写真を見たのですが、左下の暗い部分がつぶれて見えなくなっています。やはり本物を見ないといけないですね。
  • レンブラント・ファン・レイン、《ミネルヴァ》、1631、油彩・カンヴァス
    暗い背景の中に、三角形のどっしりとした構図のミネルヴァがこちらを向いています。やはりレンブラントは光と影の画家。
  • イタリアの素描が数十枚。
今回のベルリン国立美術館展の図録は、たいへん力が入っているようです。中には、国立西洋美術館の学芸員の方が書いた、「イタリア素描の技法さまざま」などという記事も載っていたので、思わず買ってしまいました。


2012年6月30日土曜日

三菱一号館美術館 バーン=ジョーンズ展

金曜日の夜に行くなら、三菱一号館美術館くらいの大きさの美術館がベスト。というわけで、昨晩、バーン=ジョーンズ展に行ってきました。

実は、ラファエル前派は私の苦手な領域です。図像の象徴性、中世風物語への接近、生活と芸術をいっしょにしようなどと考えているウィリアム・モリスとの密接な関係、などがどうも好きになれない理由で、絵画はもっと純粋でなければいけないという思いです。

ところが、見てみると、引きつけられる所が多い、これは不思議でした。
気になった作品は、


  • 黒チョークでバーン=ジョーンズ好みの女性が描かれている、《ディスベ − ピュラモスとディスベの物語》
  • 運命を表す大きな車輪のそばに3人の男がいる、《運命の車輪》
  • バーン=ジョーンズの自画像だと言われる、《魔法使い》
  • 大きな海蛇が気味悪い、《果たされた運命:大海蛇を退治するペルセウス》
  • 皆が寝てしまっている、《眠り姫 − 連作「いばら姫」》
19世紀の中世に憧れるイギリスに興味がある方は、展覧会に足を運んでみると良いと想います。展覧会は8月19日までです。

私がバーン=ジョーンズのことを嫌いでなくなったのは、古代中国美術を勉強しているせいで、へんな物語や、へんな造形に対して、免疫ができたせいかもしれません。

2012年6月17日日曜日

今日は雨の中屋外活動「建築見学散歩」横浜山手編

今日は残念ながら雨でしたが、いつもの建築散歩同好の皆さんと横浜山手に行ってきました。いわゆる「洋館」が今日の目玉。


  • 山手カトリック教会、J.J.スワガー、1933
  • カトリック横浜司教館別館、1927
  • カトリック横浜司教館、妻木頼黄、1937
  • 山手公園管理事務所(旧山手68番館)、1934
  • ブラフ18番館
  • 外交官の家(J.M.ガーディナー)、1910
  • 山手214番館
など。

上下式窓、鎧戸、出窓、スレート屋根など、「洋館」の意匠を満喫しました。
ブラフ18番館には、横浜に関する図書が読める部屋などもあります。興味があれば、行ってみるのも良いかもしれませんね。


2012年6月10日日曜日

ブリヂストン美術館開館60周年記念 収蔵品展

ブリジストン美術館開館60周年記念ということで、「あなたに見せたい絵があります。」というサブタイトルの展覧会が行われています。石橋財団ブリヂストン美術館蔵の作品ばかりでなく、石橋美術館の収蔵品からも、展示されています。

今回の展覧会は、様式別や作者別ではなく、1章「自画像」、2章「肖像画」、3章「ヌード」、4章「モデル」、5章「レジャー」、6章「物語」、7章「山」、9章「川」、10章「静物」、11章「現代美術」、という構成です。
そういうわけで、日本の作品も海外の作品も一つの部屋の中で隣同士で展示されています。雪舟、クールベ、セザンヌ、岡鹿之助が「山」という括りで同じ部屋に展示されているので、びっくりします。

ブリジストン美術館の収蔵品は見たことがあるものが多いのですが、今回は見て面白かったのは(良い絵だという観点ではなく、たまたま気になったという観点です)


  • マネ、《自画像》、1878−79、マネにかかると自画像もこうなる。
  • 中村彝、《自画像》、1909、暗いな。
  • 関根正二、《子供》、1919、技術的には?だとは思うのですが、なぜか惹きつけられます。
  • マチス、《画質の裸婦》、1899,最近マネの色彩に関して話を聞いたので、改めて色使いを確認。
  • 浅井忠、《グレーの洗濯場》、1901,浅井忠は随分年をとってからフランスに行ったんだなと気づきました。
  • ポロック、《Number2》、1951、東京近代美術館のポロック展で、ポロック全盛期後に興味があったので。
雪舟の、石橋美術館蔵《四季山水図》は、《山水長巻》を見た後だったので、うーん。
青木繁は、ブリジストン美術館での「青木繁」展でも見ているのですが、どうも好きになれない。

「ブリヂストン美術館開館60周年記念 あなたに見せたい絵があります」展は、2012年6月24日までです。






2012年6月3日日曜日

東京都美術館から、東京藝術大学大学美術館の「高橋由一」展へ

今日は、彫刻を造っている友人が展覧会を行っているというので、東京都美術館の「創型展」へ。公募展に立寄る事は少ないので、こんなことになっているのかと、興味深く見せてもらいました。彫刻は今でも仏像とか人物象が多いんだなとか思いながら会場を一巡。

東京都美術館はリニューアルしてから初めてでしたが、メインの入り口が南側に変わっていました。

その足で、東京藝術大学大学美術館の「近代洋画の開拓者 高橋由一」展へ。
高橋由一は、明治時代に時代に翻弄された洋画の先駆者だという知識はもっていても、作品は《鮭》を見た事があるくらいだったので、これだけ高橋由一の作品を一同に見られるのは貴重な機会でした。

会場の最初にある、「油絵以前」という章では、墨を使って西洋画的な試みをしているのが面白い。墨を使って水墨画の伝統に基づかない絵を描こうとするとどうなるのかが判ります。
その後、展覧会は「人物画・歴史画」、「名所風景画」、「静物画」、「東北風景画」と章立てされていますが、私が面白かったのは肖像画、江戸時代から明治時代へ変わる当時の人々がリアルに表現されています。

「高橋由一」展は6月24日までです。